【ケアフード】2019.1.23 メディケアフーズ展2019に行ってきました

「食べられない」を上手に解消
嚥下食メニューコンテストや調理実演、試食など

高齢者の介護や治療後の療養のための食事や製品、サービスを一同に集めた総合展示会「Care Show Japan2019」が1月23日、24日に東京ビッグサイトで開かれました。UBMジャパン株式会社の主催で、高齢者食・介護食の専門展示会&セミナー「メディケアフーズ展」をはじめ、介護用品や設備の展示商談会や、介護保険外サービスの紹介展示など6つのテーマの専門展示会が合同で企画されています。

当法人でもケアフードの研究・開発を続けており、介護食や療養食についての新しい取り組み、商品、サービスについて情報収集する目的で毎年会場に足を運んでいます。

メディケアフーズ展看板

東京ビッグサイトの会場いっぱいに関係企業が出展しており、全部のブースを回るのは至難の業です。パンフレットを見ながら、注目度の高いブースや興味のある企業の展示に目星をつけて回ります。今年で第六回の開催となる「嚥下食メニューコンテスト」も、その一つ。介護食や療養食のイメージを払拭させる見た目もオシャレで美味しそうなメニューが並び、会場は一流レストランに早変わり。その場での調理の実演も行われます。固くてもそもそする素材を柔らかく、のど越しがよい状態にし、盛り付けもとても工夫が凝らされています。

嚥下食メニューコンテスト看板写真

介護施設での調理を助ける、加工済みのやわらかい素材

介護施設や介護サービス事業者向けに繰り広げられる食関係企業による展示ブースでは、やわらかく加工して冷凍保存する食材の試食ができます。肉や魚など、骨も残らないように加工してあり、介護施設の調理場ではスチームで温めるだけでも提供できる手軽な商品もあります。中でも、注目を集めたのが、「やわらかおせち重セット」。

やわらかおせちセット

エビや昆布巻き、煮しめ、かまぼこなど固めで歯が弱い方には食べにくい食材も多いのがおせち料理。それでもお正月にはぜひ味わいたいものです。「やわらかおせち」では、見た目は通常のおせち料理と変わらないのに、口に含むとどれもすぐにほぐれ、飲み込みやすくまとまります。素材を一度潰してから成型し直しているものもあるそうです。

 

おせち以外にも、タコ焼きやお漬物まであり、どれも見た目は通常食のそれと同じでありながら、とても食べやすくしてありました。“家族と同じものを一緒に食べる”というコンセプトにもぴったりです。

ケアフードのメニュー開発、盛り付けなどにもおおいに参考になりました。

人手不足の介護施設でも活躍
ユニバーサルデザインフードの活用事例も紹介

会場では、各種セミナーも開かれました。利用者さんや患者さんの咀嚼や嚥下の状態を考慮した食事を段階別に加工、分類したユニバーサルデザインフードを活用した食事サービスについての事例紹介もありました。

近年は、介護人材の不足が叫ばれ、どの高齢者施設でも人手不足が課題となっています。少ない調理員で、三度の食事の準備も、野菜や肉、魚の素材そのものから下処理、調理、配膳まですべての工程を調理場で行っていてはとても間に合わないというのが現状です。

そこで、野菜などをあらかじめ下処理し、舌でつぶせる固さにつぶしたもの、細かく刻んだもの、ゆでたものなどを真空パックにし、冷凍したものを業者から取り寄せ、調理場ではそれぞれの素材を合わせて味をつけて、温めるという工程だけで済むようにする工夫をしている東京都多摩地区の施設の取り組みが紹介されていました。四季の季節を感じられる行事食も介護施設では大切な食事イベントです。それも、こうした下処理したものを活用することで、盛り付けにも工夫をする余裕が生まれ、彩も見た目も利用者の満足感を得られる食事が提供できているとのことでした。

ユニバーサルデザインフードサンプル

ユニバーサルデザインフードのサンプル試食品

最近は、身近に手に入れられるようになったレトルトや冷凍の介護食。一工夫するだけで、見た目も味も満足できる一品にアレンジできそうです。ただ、在宅で生活する高齢者、介護するご家族は、アレンジの方法を知らなかったり、その余裕もない場合もあります。市販品の介護食、素材の冷凍品をうまく活用した食事メニューの作り方や工夫の方法を情報提供できる機会が必要だと感じました。

介護食も療養食も、当事者である高齢の方や患者さんがどれだけ手軽に継続して口にすることができるか―これに尽きると思います。味が濃すぎたり、美味しくないもの、食べにくいものはなかなか長続きしません。心身の状態も日々変化します。今まで食べられたものが食べられなくなったりすることも多々あるので、その変化にきめ細かく対応できる食事やサービスの提供が求められています。

【参考】ユニバーサルデザインフード UDF

日本介護食品協議会が定めた規格で、利用者のかむ力や飲みこみの能力に対応して摂食しやすいように、形状、物性、容器等を工夫して製造された加工食品のこと。レトルト食品や冷凍食品、チルド(冷蔵)食品、乾燥食品、とろみ調整食品などがある。現在、81社によって約2000品目が登録されている。市販品や業務用食品など幅広く供給されている。

かむ力や飲み込む力の目安を考えて、かたさや粘度など4つの区分に分類している。

  1. 容易にかめる
  2. 歯茎でつぶせる
  3. 舌でつぶせる
  4. かまなくてよい

各食品がこの4つの分類のうちどれにあたるのかをマークで示して、共通の目安として購入者や調理者にも分かるようにしている。

日本介護食品協議会ホームページ