【先端がん医療】「慢性肺疾患に効く、“肺サーファクタント”を増やす薬が新型コロナウイルスを予防・治療」-千葉県がんセンター高野先生が仮説論文を発表

新型コロナウイルスの肺炎
「肺胞を覆う界面活性剤の肺サーファクタントを枯渇させない」がカギ
去痰剤アンブロキソールが予防と治療に有効と仮説・分析
千葉県がんセンター高野英行先生が英論文
「Medical Hypotheses」に発表

千葉県がんセンター画像診断部の医師・高野英行先生が、新型コロナウイルスの予防や治療について「肺サーファクタント」を増やす薬の有効性をテーマとする英文論文を学術誌「Medical Hypotheses」で発表しました。

肺サーファクタントは、肺胞の表面を覆っている石けん膜のような分泌物で、界面活性剤の働きをします。この肺サーファクタントが分泌されることで、肺胞の表面張力が弱まって肺胞が膨らみやすくなり、呼吸の手助けとなります。

高野先生は、放射線科医として低体重児などの新生児呼吸窮迫症候群(RDS)の治療等にあたった経験や、今回の新型コロナウイルスに関する学術的な情報の検証をする中で、新型コロナウイルスが身体の中に侵入して肺サーファクタントを枯渇させてしまい、肺組織の中でコロナウイルスが生き残れる環境ができることが肺炎の原因になっていると分析しました。新型コロナ患者の肺症状が急激に悪化する理由として、肺が潰れる無気肺を引き起こしており、それは肺サーファクタントが枯渇していることに原因があると確信したとのことです。

界面活性作用で、石けんに弱いコロナウイルスを撃退

逆に、肺サーファクタントをあらかじめ増やしておくことができれば、その界面活性作用、つまり「石けん」の作用でコロナウイルスを壊し、侵入も防いで撃退することができるというのです。

肺

肺サーファクタントを増やす手段として、急性気管支炎や喘息の治療などで使われる気道潤滑去痰剤アンブロキソール(ムコソルバン)が知られており、新型コロナウイルスの予防薬としても使えるのではないかと仮説を立てました。同様に、痰を出しやすくするブロムヘキシン(ビソルボン)も同じ機能を果たすのではないかとのことです。

高野先生の論文タイトル
「Pulmonary surfactant itself must be a strong defender against SARS-CoV-2」
コラムは、こちらからご覧ください。
医療ガバナンス学会  vol.136肺サーファクタントが、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に対する強い防御

謎の多い新型コロナウイルス

医療者の間では、喘息患者さんが新型コロナウイルスに感染、重症化するケースが少ないことが話題となっており、その理由についてはまだ分かっていません。また、新型コロナに感染した方の中には、軽症から症状が急激に悪化して死亡するケースも報告されており、症状の緩和、治療、予防法の開発が急がれています。

高野先生はNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の常任理事。
当法人では、先端がん医療研究の助成事業などを行い、医学研究をサポートしています。

当NPO法人理事長の竜崇正と高野先生の「新型コロナウイルスと肺サーファクタント」をテーマとした対談もYouTubeにて公開中です。(2021年6月撮影)
ぜひご覧ください。