新型コロナ 疑問にお答えします―動画対談を読み物にしました

新型コロナ解説をじっくり
がん患者さんの悩みや不安に、ピンポイントで答える対談

6月18日、「動画で患者サロン 患者さんの疑問にお答えします」を公開しました。千葉県がんセンター患者サロンの世話人をされている宮地愛さんと当NPO法人の竜崇正理事長による対談です。YouTubeによる動画3本立てで発信しましたが、ご覧になった方から、「動画だとメモを取ったりしにくい」「内容をじっくり考えながら見たい」などの声が寄せられました。そこで、対談の一部を文字化して読み物として読んだいただけるようにしました。以下に、対談の様子を記載します。

宮地 愛さん
(千葉県がんセンター患者サロン世話人)

千葉県がんセンター患者サロンの世話人、千葉県のがんピア・サポーターを務めています。ご自身もがんの治療と向き合いながら、患者さんの悩みや不安に寄り添い、親身になって相談を受けておられます。新型コロナの感染拡大の影響で、現在患者サロンはお休みですが、宮地さんのもとには、がん患者さんの仲間から治療の継続や新型コロナへの対応についてたくさんの質問や不安の声が寄せられているそうです。今回はがん患者さんを代表して、その声を届けてくださいました。


竜 崇正先生
(NPO法人  医療・福祉ネットワーク千葉理事長)

元千葉県がんセンター長。現在、浦安ふじみクリニック院長を務める。長年、がん患者さんの診療・治療に携わってきて、現在も患者会や患者サロンにも積極的に参加し、患者さんと直接対話しながらのアドバイスを続けている。登山を趣味としており、山の診療所の医師でもある。

改めて新型コロナウイルスって、どんなウイルスなんですか?
今、店で手に入る濃度のアルコール消毒で大丈夫ですか?

宮地さん:

本日は患者を代表してお話をうかがいします。私は、乳がんと肺がんの患者です。日頃は、患者サロンはピアサポーターとして活動しています。新型コロナ騒動になってから、みなさんどこにも相談できないということで、私のところに電話やLINEで質問してこられる方がたくさんいらっしゃいます。私も含めて、「知らない」ということが不安になると思いますので、今日はいろいろと質問させていただきます。

新型コロナウイルスとはどんなウイルスなのでしょうか?

感染経路不明の方も増えてきている中で、空気感染などもあり得るのでしょうか。靴底まで消毒している国もある中で、今、お店で手に入るアルコール濃度で手指の消毒をしている程度で効き目があるのでしょうか。

竜先生:

まず、コロナウイルスは風邪ウイルスの一つです。普通の風邪もコロナウイルス、インフルエンザもコロナウイルス、SARS、MARSもコロナウイルスなんです。今回は、4種類目。このコロナウイルスは、新型のコロナウイルスで、人類史上初めて遭遇するものです。

昨年の12月に武漢を中心に流行って、中国がそれを隠していたために世界中がパンデミックになって広がってしまた。人類初めてのウイルスなので、どんな特徴を持っているかよく分かっていなかったんですね。治療薬がなく、ワクチンなど予防薬もなかった。そんな中で、この新型コロナウイルスに向き合わなくてはならなかったんです。

でも、だんだん分かってきたことは、そんなに感染力が高いわけでもなく、死亡率が高いわけでもない。まだ治療薬、予防薬がないので、気を付けないといけないけれども、必要以上に恐れて、健康を害することのないようにしないといけないんです。

コロナ社会崩壊

がん患者さんだから、コロナにかかりやすいということはありません。

岡江久美子さんが新型コロナに感染して、お亡くなりになりました。岡江さんは乳がんの方で、放射線治療を受けていたとのことでした。そのことをあたかも関係あるように言われていますが、がん患者さんの中には、「がんの患者は、とりわけコロナにかかったら具合が悪いのではないか」と誤解している人も多いのです。その世界中の論文、治療経過を見ても、がん患者さんが特にコロナウイルスにかかりやすいとか、かかったら死んでしまうといったことはないです。がん患者さんは、(感染において)特別ではありません。がん患者だからといってコロナにかかりやすい、死にやすいということはありません。

コロナはウイルス、細胞の中に入り込んで生きる

もう一つは、コロナはウイルスなので、生物ではありません。その辺にうようよしていて、自分で歩いてどっかに行くことはないのです。ばい菌とウイルスを間違えている人もいますね。このウイルスは人間の鼻咽頭から、肺に入りやすい。肺の細胞の中に入ってしまうのです。細胞の中に入り込んで初めて生き永らえる。ウイルス単独では生きてはいけません。

また、感染している人がくしゃみしたら、その飛沫が周りの人にかかって感染します。飛沫感染が主で、空気感染ではないのです。ただ、クルーズ船の中で、エアコンを通じてエアロゾルのようになって空気中を漂って感染するという場合もありました。しかし、普通は飛沫感染です。しゃべっている人の周りには飛んでいるので、大声出したり、歌を歌ったりすると飛沫は飛びます。飛沫は2m以上は飛ばないだろうというので、ソーシャルディスタンスを2mあけようということになっています。ウイルスが、唾液や粘液にまざっています。唾液は下に落ちますよね。だから、空気中にいつまでも漂っていることはありません。

がんの中でも、とりわけ肺がん患者のリスクはどうなんでしょうか

宮地さん:

確かに、がん患者さんでコロナにかかったという人は少ないです。肺がん患者のリスクはいかがでしょうか。

竜先生:

肺がんも同じです。コロナに感染して、肺炎として発症しても、重症肺炎になってから治療が行われています。PCR検査をして、入院しても治療薬がないので、カロナール飲んで解熱して静かにしているしかないんです。サチュレーション(肺の酸素飽和度)が下がってきたら、初めて酸素吸入をしています。コロナの治療薬がないので、ほかの薬を使ったり、試したもので良さそうなものを使って治療をしているのが現状です。日本で開発されたアビガンがいいのではないかということで、今は中国でアビガンを使っている。エボラ出血熱の治療薬・レムデシビルなどが使われているけれども、本当の意味で有効な薬はまだありません。

「肺炎、肺がんの方がコロナでほかの人より死に至りやすいか」と聞かれて、そういうことはないけれども、肺炎になってもともとの呼吸機能が弱っている場合には…そうかもしれない。これは風邪ひいた場合と同じです。とりわけ恐れる必要はありません。コロナにかからない人というのはいないので、やはり、感染を予防することは大事なんです。

宮地さん:

日本でも抗体検査を進めていますが、抗体検査は希望すれば受けられるものなのでしょうか。

竜先生:

抗体検査は何の意味もないと思っています。抗体を持ったからといって、コロナにかからないということはないのです。風邪やインフルエンザと同じです。風邪もインフルエンザも何度もかかりますよね。だから、新型コロナウイルスの抗体を持ったからといって、今後かからないということはないんです。

コロナの抗体を持っているかどうか、国が調べたけれどもデータがいい加減ですよ。大阪で3000人、東京で1900人を対象に無作為に抗体の有無を調べたけれども、東京の場合は明らかに対象人数が少ないです。アメリカで抗体検査を進めているけれども、この抗体検査は、本当に新型コロナの抗体をみているのかどうか怪しいものです。まずは確実に感染して治ったという人の抗体を検査して、どのくらい陽性になったかを調べるべきだと思います。

毎日、飛び交うコロナ関連のニュース。どの情報を信じたらいいのか分かりません。

宮地さん:

いろいろなニュースが飛び交っている中で、がん患者さん、一般の方も、特にどんなことに気を付けなければいけないでしょうか。どの情報を信じたらいいのでしょうか。

竜先生:

世界から論文が出ています。普通の論文は、何人か審査員(5-6人)が質問をして、それに答えて、本当に納得できる論文が世に出てきます。新型コロナウイルスについては、まだ一年経っていない状況ですし、人類初めての経験です。みんなで共有するために、どんどん情報を出した方がいいけれども、その中にはちゃんと審査されていない論文もたくさんあります。今は、論文に何を書いても通ってしまう。偽ネタもたくさんあるのです。

世界中の論文を集めたデータベースがあります。そのデータベースをもとにランセットなどが一流雑誌に掲載された内容も撤回されています。新しい論文が出たら、飛びつくマスコミの情報合戦になっています。テレビはあまり見ないで、NHKなどを一日一回見る程度でいいのではないでしょうか。

今、コロナについて言えることは正しい治療薬はなく、予防も飛沫を浴びないようにすることなどだけです。ウイルスはパソコンなどプラスチックの上では長めに生きている。咳をした後、スマホなどをいじっていると、それが手について知らず知らずに顔を触っています。そして粘膜に入り込みます。あと、消毒のし過ぎ、手のを洗い過ぎで手が血だらけになっている人もいますよ。その手の傷から感染しますよ。アルコールではなく、石けんで手を洗えばウイルスはなくなります。

手洗い

石けんによる手洗い

店頭からアルコールがなくなって、酒を転用している人もいます。アルコールでばかり消毒するのはやめたほうがいいです。手荒れをしないように気を付けた方がいいです。

宮地さん:

先生の話を聞いていると大舟に乗ったような気持ちになります。私たちもいろいろな情報が入る中で、自分の気持ちをコントロールしながら、がんに負けないように、そしてコロナに負けないようにしたいです。

これまで受けていた治療をきちんと受けること

竜先生:

コロナを恐れるあまり、治るがんも治らなくしたり、手遅れになったり、わざわざ自殺するようなもの。ちゃんとした治療をちゃんと受ければいいだけのことです。もし、皆さんがコロナになると嫌だから病院に行かないとします。今、それで潰れそうな病院がたくさんあります。コロナの患者さんを一生懸命治療していた病院が、「あそこに行くとコロナがうつる」と言われて嫌煙されています。そうなると自分たちが病気になった時にいく病院がないということになりかねないのです。長寿国日本も、コロナが怖い、怖いといっている間に世界最低寿命国になってしまうかもしれません。恐れる必要は全然ないのです。

マスクして飛沫を浴びないように、人に浴びせないようにする。室内ではエアコンだけではだめです。換気もしないといけません。ウイルスを外に出してしまえばなくなります。靴底まで消毒なんて全く意味がないと思いますよ。3密を避けて、太陽の光で滅菌、太陽の光を浴びてにこにこしているのが一番ですよ!。

宮地さん:

竜先生のお話には本当に勇気づけられました。ありがとうございました。