【竜理事長のメッセージ】新型コロナ解説 がん患者さんへ。感染を恐れず、必要ながん検診やがん治療を受けよう!

6月に当NPO法人のホームページで【動画で患者サロン】と題し、がん患者さんからの疑問や不安に答える形で、患者さん代表の宮地さんと竜理事長の対談をYouTubeチャンネルの動画で発信しました。

【動画で患者サロン】新型コロナ がん患者さんの疑問にお答えします

患者さんからの声や不安の中で、一番目立ったのが「コロナに感染するのが怖いが、この状況で病院での診察に行ってもいいかどうか」というものでした。コロナ感染への恐れも当然ながら、医療崩壊している状況をみて患者さんが独自の判断で、受診をできるだけ控えているという方もおられました。

竜理事長、当NPO 法人からも、「がん患者さんだからといって、コロナにかかりやすいということはない。感染リスクはみな同じ」「がんの治療は控えることなく、継続してほしい」などのメッセージを発信してきました。最近、東京を中心に新型コロナ感染者が再び増加傾向にあるので、竜理事長より改めてがん患者さんへのメッセージを発信いたします。

新型コロナウイルス感染拡大の影響
がん死亡増加の危険性の指摘あり
がん治療用ベッドの削減、手術削減、患者の受診控え…

新型コロナウイルス感染COVID-19の影響でがんの治療成績が大幅に悪化し、がん死亡が増加する危険性が指摘されている。1つは病院側の問題で、感染患者が急増したため病棟が足りなくなり一般病棟が感染症病棟に転用され、がんの治療用ベッドが削減されていること。院内感染対策でがん治療にかかわる人員が結果的に削減されていることで、手術件数を減らさざるを得ないという病院側の問題もある。しかし最も大きな要因は、患者が感染を恐れて受診を控えていることである。

日本のPCR検査は行政検査
医師の裁量ではできず…すべての患者受け入れによるクラスター化も

日本ではPCR検査や抗原検査等、新型コロナウイルス感染の検査が、指定感染症の為に医師の裁量ではできず、全て行政検査で行われている。そのため病院は患者が感染しているか否かの診断ができないまま、全ての患者を診ているので病院がクラスター化しやすいのである。しかし、がん専門病院や大きな病院は、自前で入院患者のPCR検査を行っているなど感染防御に対する危機意識が高く、レベルも高い。がん治療中の患者が感染したとの報告はないので、安心してがん治療を受けてほしい。

アメリカ、イギリスでもがん患者の診療回避が問題に
対面ケア、画像検査、化学療法に影響

日本では、7月21日の時点で新型コロナ感染による死者は1000人だが、このままがん患者の治療回避が持続すれば、治るがんが進行し、数百倍の死者が出ることが危惧される。アメリカでも、イギリスでも、がん患者の診療回避が問題となっている。米国がん協会がん行動ネットワーク(ACS CAN)が実施した調査では、回答者1,219人の半数が、受けていた治療の変更、遅延または中断をしている。影響を受ける頻度が最も高かったサービスは、対面ケア訪問(50%)、支援サービス(20%)、および腫瘍の増殖を監視する画像検査(20%)であった。さらに、化学療法や免疫療法などの治療が8%影響を受けたと報告した。

英国では、マクミランがんサポートの調査によると、がん患者のほぼ半数(45%)が、がん治療の延期または中止を経験していると報告した。イギリスのCancer Research UKは、コロナ感染を危惧して、がんの検査や治療を受けなかった人が240万人と見積っている。そして、英国でCOVID-19による死亡者数が減少した後は、がんが爆発的に主要死因になると警告した。

コロナ感染を恐れて治る「がん」を手遅れにしないよう皆で注意しよう。

Science. Published online June 19, 2020. Editorial、Medscape Medical News © 2020。
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https://www.medscape.com/viewarticle/932858

竜 崇正(NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉 理事長)