NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉
第2回 市民公開講座
「ストップ乳がん死!! 早期発見が全てです」


がん早期発見、治療は"お得"
治療にかかるお金をテーマに分析




早期のがんなら治療費は年間20万円、後期なら100万円―。2月21日に千葉市内で開かれた第2回NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の第二回市民公開講座では、乳がんをテーマに治療にかかる"お金"の面から早期発見、検診を受けることのメリットについて検討しました。医師からは、検査や手術、術後の化学療法などすべての過程で早期治療が身体的にも経済的にも負担が軽くなるとの見方が示されました。

 「ストップ乳がん死!!早期発見が全てです」をテーマに開かれた市民講座には、がん患者さんや家族、医療関係者約80人が参加しました。

                         治療費平均 1年間に100万円
  
  東北大学大学院の濃沼信夫教授は、がん医療を患者さんが支払う治療費や検査費用など経済学的な側面から分析したデータを示し、「外来治療や入院に加えて民間療法や健康食品に頼る患者も増えており、年間の自己負担金は平均で100万円はかかっている」と指摘しました。そのうち償還や給付金を差し引いても40万円程度は持ち出しになるとし、「がんの治療費は手術した時だけ支払うという断片的なものではなく継続して払っていく必要があり、患者さんにとっては心理的にも負担が大きくなる」と強調しました。

  さらに濃沼教授は、早期発見のための検診受診率を上げると、検診費用の国民負担や検診精度アップのための予算が今まで以上に必要になってくるが、一方で早期発見・治療による患者さんの負担は軽くなり、結果的に医療費の節約にもつながると説明しました。

                         期発見ならば、前より美しい乳房にも?!

  亀田総合病院乳腺科の福間英祐部長は、乳がん患者さんの治療費の負担を調べたところ、治療開始からの一年間で早期がんは年間20万円、進行がんはその5倍の100万円かかると説明。さらに「早期発見であれば体への負担も軽く費用もかかりにくい。妊娠の可能性も十分残せ、治療前よりも豊かで美しい乳房に仕上げることもできる」と語って、検診を受けて早く治療に臨んでほしいと語りました。一方で、乳がんが早期に見つかったとしても手術法はある程度時間が経ってから見つかるがんとほぼ同じ方法で行うところが多く、「凍結療法などの局所治療を中心に早期発見に見合う負担の少ない方法を開発していく必要がある」と医療技術の面でも進展をはかるべきだとしました。


                                  受診率アップへ
             無料クーポン郵送、ダイレクトメール、電話...「直接」が効果的


 パネルディスカッションでは、「乳がん検診の普及を阻むものは何か?」をテーマに討論しました。昨年から千葉市がスタートした乳がん、子宮がんの検診無料クーポン券の郵送が検診数増加に効果を上げているという報告もあり、参加者からは「ダイレクトに送られてくるもの、インパクトのあるものは目にとまる。一般市民にとって関心の高い治療にかかるお金についてポスターにして貼ったらどうか」「地域の保健師からの電話や手厚いフォローも効果があると思う。一人ひとりへの丁寧な対応を地道にやるべきでは」などの意見が出されました。
 
 千葉県ではがん検診の受診率アップを狙い、2年後の平成24年度までに受診率50%以上達成という目標を設定しています。ただ、現状はがんの部位によって差はあるものの、30〜40%にとどまっています(乳がんは36%、子宮がんは35%)。
 
 公開講座ではこのほか、千葉県がんセンター乳腺外科部長の山本尚人さんが「心と体にやさしい乳がん医療」をテーマにがんセンターで進めている治療を示しました。ちば県民保健予防財団総合検診センター診療部長の橋本秀行さんは現在乳がん検診では主流のマンモグラフィと超音波を使った検査をわかりやすく紹介、船橋市立医療センター手術部長・副外科部長の唐司則之さんが船橋市でのマンモグラフィ検診の体制について説明しました。

 乳がん検診の受診者増加に向けての千葉県の現状と目標について県健康福祉部健康づくり支援課長の山崎晋一朗さんが講演。船橋薬剤師会カネマタ薬局船橋北口店薬剤師の幸田真純さんは、乳がんのしこりを組み込んだ乳房模型モデルを薬局の窓口に置いて、実際に患者さんに触診を体験してもらった事例を紹介しました。ねむの会代表の金井弘子さんは、県内の高校生を対象に健康セミナーや出前講座を行った体験をスライドなどで示しました。
 
 当日は寒い中、皆さまのご参加本当にありがとうございました