回診、外来のシステムをつぶさに見学
            個人情報の管理、感染症対策でも違いを実感
           
            千葉県病院局 研修医 
            近森 正智 


 



  今回見学させてもらったToronto General HospitalUniversity Health Networkに属しており、大学病院とほぼ同し?形態の病院です。安福先生のいらっしゃる呼吸器外科にて研修させて頂きました。私は内科志望をしておりましたので、手術室の見学は1日目のみとさせていただき、Fellowの先生について外来見学をメインとさせて頂きました。しかし最終日には(閉胸だけですが)肺移植の手術、移植カンファも見学させて頂きました。

≪Time Table≫
630           FellowNurseによる病棟回診
730           ナースステーションにてDrNsが集まり患者の処置指示
8時頃              Fellowにより他科依頼PtICU回診
9時?              外来もしくは手術。終了したら病棟回診。

≪日本との対比≫

・患者
診療される上で患者さん自身が気になる点については日本の患者さんと同様であるが、不明な事があったら、その場で聞いてくれる点は日本と少し違ってはいました。

・病棟業務
  病棟業務はFellowの先生が主に担当しています。それにオマケとして研修医がつく形になっていました。病院スタッフのDrは手術、研究(と外来)が主な仕事となっているため、病棟ではあまり見かけません。朝の病棟回診ではSOAP式の内のPlanを決定することもあり、日本の研修医による回診のように比較的細やかな回診となっていました。処置指示出しについては回診で決めたPlanを言って病棟スタッフに今後の方針確認をします。実際にchest tubeの抜去などの処置をするのはPractisional Nurseで、研修医と同じ程度の権限を持っているという感じでした。ICU回診についてはFellowのみで回り呼吸器管理などの状態を把握して設定の指示出しをするだけでした。入院期間は日本と比較し、比較的短い(Lobectomyについては3日など)が、アメリカでよく言われるような「入院できるのは、歩けないような重症な人だけ」というわけではなく、歩行補助具を使いながら歩いている入院Ptはよくいました。

  驚かされたのは個人情報の考え方で、紙カルテなのですが温度板が病室のドア近くに立てかけてあり、回診の時などにいつでも閲覧できるようになっていました(逆に言うと誰でも閲覧できる状態)。日本では個人情報の兼ね合いから温度板はどうしてもナースステーションの中に戻す事になっている病院がほとんどのため、あまり見かけない状況でした。

  感染対策については「手洗いしよう」とのポスタがそこかしこに貼られており、またMRSAなどのPtの病室のドアにはキャップ、マスク、ガウン、手袋のうち何を付けなくてはならないのかのチェックリストが大きな紙で貼られており、来院した家族にも分かりやすい表記になっていました。(日本の場合だとMとだけ書かれたラベルが小さく貼られていたり、マスクが置かれているだけだったりで何も表記されていないことも多々あります)

・外来
  私はFellowDr. Castleについて外来見学をしてましたが、スタッフブースにて画像、カルテの確認をしてからPtのいる個室に移動し外来診察をするという形をとっており、治療方針を確認をしてもらいたい時には安福先生とスタッフブースにて相談し、相談後に安福先生とPtを受診するという形をとっていました。

  外来は呼吸器内科・外科病棟と同じフロアに呼吸器専門の外来があり、そこで呼吸器系の検査もできるようになっているので、DrPtの動線が短くなるように病院の建物が設計されていました(ただしCTなどの画像については違うフロアにあるので日本のように外来棟があった場合よりも、Ptの動線は伸びているかもしれません)。

  基本的に仕事をする役職の分担は異なりますが、やっている診療内容については細かい点でいくつか異なります(褥瘡の持続吸引や気管支狭窄に対するYAGレーザはあまり日本では出来なかったり、逆に腫瘍マーカー測定や気管支鏡下生検はカナダではあまり実施されない)が、他の部分では同じでした。よく「日本の診療レベルはなかなかのもの」と言われても、まったく実感を持てなかったのですが、今回の研修でそのことを確認することが出来たので、今後の勉強の励みになりました。

  寄付金を多く募っており、その寄付金で検査室などが新たに設置できたりと資金面では豊かなようにも見えましたが、オーダー以外の電子カルテを設置するのは高価なため電子カルテが導入されていないなど妙に節約されている部分もあったので、ハードとソフトを合わせた充実さでは日本の大学病院とあまり差はないのかもしれません。