医師が手術、診察、治療に専念できる仕組み
            看護師などコメディカルが専門的なサポート
            研究部門も費用、設備ともに充実
  
            千葉県病院局 研修医    
            丸山 聡




 



103日から6日までカナダのトロントにあるToronto General Hospital(TGH)で研修してきました。この研修の実現にご尽力頂いた竜崇正理事長をはじめとするNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の方々、引率の千葉県救急医療センター診療部長の沖本光典先生に感謝申し上げます。

 TGHでは、Thoracic Surgery Divisionの千葉大呼吸器外科出身でスタッフの安福先生とフェローの中島先生にお世話になりました。我々は、そのThoracic Surgery Divisionのレジデントやフェローに付き、その業務を見学することになりました。レジデントやフェローは、カナダ出身は勿論のこと、ブラジルやイギリスなど世界各国から来ているようでした。私が付いたのはオマーン出身でチーフレジデントのDr.Yaqoobでした。

 見学初日は、安福先生の肺の部分切除など2つの手術を見ました。2日目以降は、朝6時半からの病棟の回診後、Dr.Yaqoob の手術を主に見学しました。胸壁に出来たSarcomaの生検、肺の部分切除や食道切除などをみました。日本では食道の手術は消化器外科が担当しますが、現地ではThoracic Surgery Divisionで扱うとのことでした。器械出しの看護師は部門ごとの専門らしく、ひたすらThoracic Surgery Divisionだけの仕事をするそうです。ですから手術の手技を暗記していて、ドクターが「何々が欲しい」と言わなくても黙って器具が出てくるという状況でした。日本では人数不足ですし、なかなか実現は難しいとは思います。

 院内の連絡は、PHSではなくポケットベルを使用していました。またセキュリティの関係なのか、Blackberryを使用しているドクターが多かったです。これは各自で持っているのか支給されたものなのかはわかりません。また手術後、手術についてカルテに書くということはなく、電話で話して、それをdictationしてもらう形式でした。ドクターからしたら楽な仕組みだと思いましたが、これもコストがかかることですし、日本では実現が難しいと思います。 



 見学が早く終わった日には、中島先生に研究室を見せていただきました。研究費をもらってくるのもスタッフの大きな仕事だそうです。私は医学研究をしたことがないので、詳しいことはわかりませんが、日本とは予算規模がだいぶ違うようです。人の名前を冠した施設も多く、これは研究費を寄付した人の名前が付けられており、日本にはない寄付の文化がそうさせているのだと思いました。また動物を使った実験、手術の場所もあり、動物用のCTなども装備されていました。現地では日本以上に動物実験に対する規制が強いとのことで、最新式の手術器具で、人間用の麻酔の機械を使い、必要以上に苦痛がないように行うと聞きました。

 最終日には、ナイアガラの滝観光に行ってきました。言葉で表現するのはかなり難しいですが、思っていた以上に雄大で、流れも速く、水しぶきも大量で、迫力が物凄かったです。晴れていたので、虹も見えて綺麗でした。

 個人的には、英語力の無さもあり、見たものすべてが身になったと言い難いですが、刺激は大いに受けました。そして、日本を離れ、海外で活躍する安福先生や中島先生が非常に羨ましく感じました。カナダは日本の専門医の資格があれば現地のライセンスがなくても働けるそうです。そういう意味ではアメリカに行くよりは敷居が低いと思いました。海外で働くことに憧れを持ちました。いつかそういう機会があれば良いと思います。