効率よく、一人ひとりに丁寧な診療
            開胸、開腹とも 低侵襲手術
            研究環境も充実、動物実験用の手術室やCTも

            千葉大学医学部附属病院 研究医
            辻 正樹




 



Tronto General Hospital (以下TGH)にて10/310/6まで病院見学をさせて頂きました。病院はトロント市内中心にあり、研究施設も併設された中核病院です。周囲にはThe Hospital for Sick Children, Mount Sinai Hospital,Princess Margaret Hospitalなどがあり、複数の病院が一つの地域に集約されていました。見学を受け入れて下さったのは、TGH Thoracic Surgeryの安福和弘先生です。TGH Thoracic Surgeryは世界的に有名であり、様々な国から医師が見学や研修に来ていました。私はイタリア人のレジデントと行動を共にし、研修を行いました。

病棟は6時半の朝回診から始まります。チーフレジデントを中心に各レジデント、看護師、ソーシャルワーカーとともに回診を行います。回診をしながらその日の検査・今後の方針を決めていきます。回診後にはナースステーションにてスタッフミーテイングが行われ、コメディカル間の情報交換、意思疎通がはかっていました

 外来見学では日本とのシステムの違いを大きく感じました。日本では外来と病棟は切り離されていますが、TGHでは外来と病棟は同じフロアにありました。外来診療は、あらかじめ患者さんには診察室で待っていてもらい、そこへ病歴、検査・画像結果などを確認した医師が出向くというものでした。1日の外来患者は日本ほど多くなく、1人1人にかける診療時間が十分取られているという印象を受けました。また、医師それぞれには専属の秘書がおり、患者の次回外来や検査・手術の日程調整などを行っていました。そのため、医師は検査のオーダーや患者スケジュール調整に無駄な時間を割くことなく外来診療に専念できていました。

                  

 研修の2日間は肺癌と食道癌の手術を見学しました。肺癌に対する肺葉切除は完全胸腔鏡下で行われ、食道癌に対する食道切除・再建術は胸腔鏡、腹腔鏡を併用していました。いずれの手術でも開胸、開腹といった侵襲を加えずにできるだけ低侵襲に手術が行われていました。臨床、研究ともにMinimal invasive surgeryを目指しているとのことでした。

TGHは肺移植が盛んな病院であり、見学期間中にも移植の問い合わせが何件もありましたが、実際に移植手術を目にすることができなかったのが唯一の心残りでした。

また、病院には研究施設が併設しており、安福先生のもとで研究をされている中島先生に、施設内の案内をして頂きました。その中でも驚かされたのが、動物実験用の手術室やCT機器が設置されていた事です。いずれも実験用で小さな作りになっていましたが、日頃我々が病院で使用している環境と同等か、それ以上の作りになっており日本とカナダとの研究費がケタ違いであることが実感されました

研修中には安福先生や中島先生と食事を共にする機会がありました。海外で御活躍されている先生方の考え方や将来のビジョン、カナダの医療、海外からみた日本の医療など、直接お話しを伺うことができました。実際に海外の現場で働かれているお二人の言葉はどれも重みがあり、研修医である自分にとって大きな財産となったことは間違いありません。安福先生、中島先生有難うございました。

最後になりますが、今回の研修を御引率頂きました沖本先生、共に研修をした宮地さん、丸山先生、田口先生、近森先生、そして今回の研修を手配して下さった医療・福祉ネットワーク千葉の関係者の方々に御礼申し上げます。有意義な海外研修を有難うございました