【竜理事長のメッセージ】子宮頸がんワクチン、がん前段階に加えて「がん発症予防」を実証。痛みの副反応軽減などの工夫も進化

子宮頸がんワクチン
がんの前段階に加えて、がんそのものの発症リスクも減らすことが証明された
2020年10月6日の毎日新聞報道を受けて

子宮頸がんはヒトパピローマウイルスが原因で感染するとされる。日本でも認証され、感染を防ぐワクチンの投与が始まったが、痛みによる副作用やワクチンが無効だとするグループの反対を受けて、厚生労働省が「推奨しない」とのコメントを発表している。その後は、ワクチンを接種する人の数が急激に減っていた。

子宮頸がんワクチン

スウェーデンの研究グループが報告
ワクチン接種群の子宮頸がん発症低下
17歳未満の接種でリスク88%減

このほど、スウェーデンのカロリンスカ研究所では、住民登録などを行いながら2006年から2017年に10歳~30歳だった女性167万人余りを「追跡調査」した。スウェ―デンでは2007年に、13歳~17歳の女性に4つのパピローマウイルスの型に有効なワクチンの接種プログラムを開始している。同国では通常3回接種だが1回でも摂取した人を接種群として、非接種群との子宮頸がん発がん率を比較検討した。対象は、接種群53万人、非接種群115万人。その結果は、接種群で19人、非接種群で538人が子宮頸がんを発症した。調査対象者の年齢条件を調整した結果、10万人あたりの発症は、接種群で47人、非接種群で94人と2倍の差があった。接種時期を17歳未満と17歳~30歳で比較すると、17歳未満の接種では子宮頸がん発症リスクが88%低下し、17歳~30歳の接種では53%低下したとの結果だった。

 

従来の研究では、ワクチン接種により「がんの前段階」のレベルの発症が減ることがわかっており、この「がん前段階病変」が本当にがんになるのかは疑問視する意見も多かった。今回の研究で子宮頸がんの発症リスクが減ることも証明された。

日本では2013年にヒトパピローマウイルスワクチンが定期接種化されたが、疼痛など副反応とされる症状が報告されて、同年6月に積極的勧奨が中止されている。承認前の臨床試験では、効果判定をがんの前段階の発症抑制においていたため、本当に子宮頸がん発症が減るのかどうか疑問視されていた。

2020年10月に、当院で子宮頸がんワクチンのサーバリックスを接種した方は痛みを訴えなかったので、除痛に関しても痛み軽減の工夫がされている可能性もある。