手術の進行パソコンモニターで確認
            iPhonでスタッフ同士コミュニケーション
            ハイテク活用で合理的、効率的な医療
                                 
            千葉県循環器病センター心臓血管外科
            椛沢 政司 



 


 我々4人は、YNHHでの1週間の見学の機会をいただきました。現地は日本とほぼ同様か若干肌寒いくらいの気候でした。同院の規模は約1000床と日本の大病院相当の規模でしたが、手術室は3棟に別れて存在し計60室、カテ室が13室、と日本では想像ができない大きな規模でした。

【研修日記】
 10月22日(月)
 AM 6:20病院集合。まだ辺りが真っ暗な中を病院に向かう。アメリカの病院は朝が早いと聞くが、本当であった。入室は多くがAM7:30から始まる。AM6:30からVascular Conf. (早朝から大変だと思ったら、こちらではresidentは4-5時台に出勤するが遅くとも17-18時までには帰るそうだ。そう考えれば日本と3時間程度ずれているだけで、決してきついわけではないのかもしれないと思った)。その後、多忙なはずのDr. Sumpio自ら院内を案内して下さり、血管外科医・心臓外科医・各病棟等に紹介してくれた。昼にはVascular Lab. confに同席した。千葉とも縁のある日本人の先生が基礎の分野で活躍されていた。午後はDavid手術や、人工弁感染による僧帽弁再置換術を見学した。夜は、Dr. Sumpioが大学病院近隣では一番(らしい)のレストランで高級なdinnerをごちそうしてくださった。朝から晩まで、我々を非常に温かく歓迎してくださっているのを実感でき、うれしかった。

 10月23日(火)
 vascular, cardiacともに大きな手術予定がなく胸腔鏡下肺葉切除術を見学。午後は早めに病院を引き上げてYale大学構内や市内を散策した。夜はみんなで近隣のbarへ行き、交流を深めた。

 10月24日(水)
 AM8:00Cardiothoracic conf.のあと、MICSでの僧帽弁形成術などを見学した。MICSは日本でも広がりつつある手技であるが、なかなか普段の職場にいても見ることができるものではなく、とても参考になった。術中トラブルの対応なども見ることとなり、さらに勉強になった。術後のICUにもついて行き、ICUの診療の様子も見ることができた。手術の進行は手術室外からもパソコンで手に取るように分かり、また執刀医師は手術準備が整ったところでiPhoneでcallを受けるなど、ハイテクを駆使することでスタッフが皆無駄なく効率的に動いていたのが印象的であった。

 10月25日(木)
 朝から夕まで、re-doの僧帽弁置換や冠動脈バイパス術など多くの手術を見学した。冠動脈バイパスや僧帽弁置換はresidentやfellowが執刀していた。日本とのstrategyの違いや、日本にはないPhysician’s assistantによる大伏在静脈の内視鏡的採取なども見学でき、勉強になるとともに、若手医師の修練環境や医療環境・システムなどについて考えさせられる1日であった。

   

    
 
  10月26日(金)
 当初は朝からNYに移動する予定であったが、前日にDr. Sumpioから腹部ステント-グラフト(EVAR)の症例と大動脈弁置換+上行置換の予定が入ったから、良かったら見学するように勧められ、見学。EVARのやり方は日本と違う点も多く、参考になった。昼のAmtrakでNYに移動し、夕方は各自わずかではあったがNY市内散策をした。夜はミュージカル鑑賞などを楽しんだ。

【感想】
 マスクやブラシといった小物から手術器械まで、現在の職場にはないけれども是非とも取り入れたいものもいくつかありました。カンファレンスでは日本と異なる治療戦略や様々な医師の考えを直接聞くことができ、勉強になりました。手術室をはじめとする院内のパソコン・モニターでの管理や、全員に配布されたiPhoneによるコミュニケーションなど、いたる所に医療がスムーズに行われるための環境が整っており、医師や看護師らの身を削るような献身によって辛うじて成り立っているような日本の環境とは大きく異なっていると感じました。このように、アメリカの合理的で優れたところも多数学ぶことができ、一方では日本の方が良い点もあり(手技そのものは日本人の方が細やかで上手だと思う)、理想の医療環境を考える上では、非常に得ることが多い旅になりました。

 個人的には、期間中ずっと喉風邪を引いてしまい、参加者の皆様にご迷惑をおかけしたことを申し訳なく思うと同時に、自分自身も海外を十分にエンジョイできなかったことが残念でした。また、英語力の不足を痛感するとともに、その必要性を再認識できました(実はこれが一番大きかった収穫かもしれません)。

 最後に、研修を快く引き受けてくださったProf. Sumpio、今回の研修のarrangementおよび引率をしてくださった山口聖一先生、そしてこのような機会を与えてくださったNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の皆様に深謝いたします。