“patient first”の精神が実践された環境
         効率的に手術を進めるシステムも整う
         コメディカルスタッフも充実、ケア手厚く
         

            千葉県立病院群 研修医
                 福田 幸寛



 


【1日目】Cerebrovascular Center
                   
細やかな診察が印象的
 初日はCerebrovascular (脳血管)Centerに配属され、病棟のラウンドに同行させていただきました。ラウンドではその日の担当スタッフDrがレジデントたちを引き連れて、非常に細やかな診察を行っていたのが印象的でした。見学者に対してもオープンで、質問にも丁寧に答えてくれました。北海道大学から留学されているDr.長内が付きっきりで案内してくださり、初日から有意義な時間を過ごすことができました。


 


【2日目】Cerebrovascular Center

 二日目は主に血管内治療の見学をさせていただきました。デバイスは日本未承認のものが多々あり、やはり世界の医療をリードしているという印象を受けました。大きな部分では行っていることに相違はなく、当たり前のことかもしれませんが、根本的な治療はそう変わりがないと思いました。

                  留学生交流会にも参加

 またランチでは月に一度行われているという留学生交流会にも参加しました。私は中国から留学している血管外科のDrと話す機会がありました。ちょうど同年代で、心臓外科から血管外科に専攻を変えたエピソードなどとても参考になるお話をさせていただきました。

 また夕方にはNeurologyの部長であるDr.UchinoからCleveland Clinicについてのレクチャーがありました。とくに印象的だったのはCleveland Clinicと関連病院でのTelemedicineの状況で、テレビ電話で診療をして適応があればt-PAを行いながら自前のヘリやラピッドカーで救急搬送するシステムが構築されていることでした。ちょうどラウンドで劇的な回復をした患者さんを目の当たりにしていたので、医療システムの構築の重要性について実感しました。


【3日目】Transplantation Center&Cardiovascular Surgery

                              肝移植術を見学

 2日目の深夜に、脳死移植があるとの情報があり、早朝からの肝移植手術を見学させていただきました。

午後からはCardiovascular Surgery(心臓血管外科)に見学できるよう松尾先生に交渉していただき、 CABGの手術を見学させていただきました。術野はカメラ越しでのみしか見えませんでしたが、グラフトをPhysician Assistantが採取していた点が大きく日本とは異なっていました。オペ室そのものは日本と大差はなかったですが、手術室が並列されていて各部屋の外で手洗いが可能になっており、術者が連続して複数の手術をしやすい環境になっているのが印象的でした。








【4日目】Cardiovascular Surgery , Cardiovascular ICU&Cardiovascular Dynamics Lab

 四日目も午前中はCardiovascular Surgeryで Mini-AVR(大動脈弁置換術)の見学をさせていただきました。写真がないのが残念ですが、ガウンを逆向きに着せられ芋虫状態で術野に近寄らせていただき、術者の真横で見学ができました。
 Cardiovascular and Thoracic surgery ICUでは胸部外科術後のICUが単独に存在しており、ナースや呼吸療法士などコメディカルスタッフが非常に充実していました。約70床のベッドがあるという規模の大きさだけでなく、ECMOを使用している患者にはナースが1対1でケアをしている点にも驚きました。

                       Fukamachi先生のラボを見学

午後からはDr.Fukamachiのラボ見学をさせていただきました。私は今まで人工心臓に携わる機会が少なかったのですが、とても興味深く刺激的でした。日本人がアメリカの第一線で研究をしている誇らしさもありましたし、自分も将来的には臨床にせよ研究にせよ留学をしたいと再認識するきっかけをもらいました。


【5日目】Heart failure ICU

最終日はHeart failure(心不全) ICUの見学をしました。ICUの他にもstep down病棟があり各病態に合わせてスムーズに退院へと進めていくシステムができていました。また、VAD(補助人工心臓)術後の患者さんからもお話を伺うことができました。





 
【感想】
                         桁違いな病院の規模に圧倒される
                患者さんが過ごしやすい工夫、随所に

 クリニックという響きからは想像もつかないほどの巨大な規模の病院にまず圧倒されました。そして、ホテルが併設されていたり、誰でも利用できるカフェや売店、無料で使えるwi-fiが飛んでいたり訪問者が過ごしやすい環境が整っているところが “patient first”という言葉が実践されている一つの側面であると感じました。一方で、日本で同じような施設を作るのは資金面でまず無理であろうと考えますが、経済や医療制度の違いがあり良い悪いで比較できるものではないと思いました。

 懸念していた英語力に関しては、診療に関する部分ではある程度理解はできたもののディスカッションなどができる状態ではなく予想通りもっと研鑽が必要だと痛感しました。臆さず飛び込む勇気だけは持つようにしましたが、まわりの方々に助けられ、頼ってしまう場面が何度もあり、反省しています。

 しかし、自分の現在地を知れたこと、アメリカの医療を肌で感じられたこと、研修を通じて多くの方々と知り合うことができたことなどたくさんの収穫があり、研修に参加させていただき本当にいい経験ができたと思います。シカゴとNYの観光も短かったですが楽しませていただきました。

 このような機会を設けていただいたNPO医療福祉ネットワークに感謝します。また、研修リーダーの山口先生には負担のかかる調整をしていただきました。研修メンバーにも大いに助けられ、楽しく過ごすことができました。この場を借りて、感謝を申し上げます。ありがとうございました。