脳死移植の全行程を見学
         心臓、肺、肝臓、腎臓の摘出に助手として参加
          銃殺したのち自殺の男性、緊迫した現場を経験


            千葉県立病院群 研修医(2年目)
                 木本 豪



 


                 脳死の臓器摘出に立ち会う           
  
今回の一番の収穫は、脳死移植の全行程(ドナーから臓器を取り出し、レシピエントに移植するまで)を見学出来たことである。しかも、臓器の取り出しは、手洗いをさせていただき、臓器摘出術に助手として参加することが出来ました。脳死患者は、医学的には死亡確認されているので、臓器摘出はアメリカの医師免許がなくても良いとの解釈で手術に入ることに許可が出ました
   

 

●症例:35歳、男
現病歴:妻を銃殺した後、自分の頭を撃ち自殺。脳死判定となり、移植ネットワークに登録される。

●11/12(火)
12:30脳死判定となる。移植ネットワークによりレシピエントの選定が始まる。脳死患者が入院している病院は、Cleveland Clinic (以下、CCと省略)に近く、摘出予定臓器が心、肺、肝、膵、腎に決まり、全ての臓器移植はCCで手術可能と判断となり、全てのレシピエントはCCに至急来院する様依頼された。

20:30 移植チームと胸部外科チームに分かれて、CCを車で出発し、ドナーの病院に向かう。

21:30 病院に到着

22:30~23:00 開胸、開腹開始し、摘出予定臓器をほぼ郭清し、いつで摘出出来る状態となった。摘出術は、心が最初であるが、心のレシピエントの準備が遅れており、開胸、開腹した状態で一旦手を下し休憩とする。

●11/13(水)
1:00~2:00 心、肺、肝、腎の順番で臓器を摘出する。膵は、浮腫が強く、摘出を断念

2:30 病院出発し、臓器と共にCCに車で戻る。

3:30 CC到着し、直ぐに肝と腎の移植を受けるレシピエントが手術室に入室し、開腹し移植術開始する。開腹している間、グラフトの縫合する血管をきれいにする後処理をする。この後処理も手洗いをしてお手伝いさせていただきました。具体的には、ドナーのIVC(下大静脈)、肝動脈、胆管をレシピエントのものとつなぐので、余分な組織を取り除き、生食でflash(動脈や静脈に注入)し管(IVC、肝動脈、胆管)に穴が空いていないか確認した。この工程は40分程かかった。

レシピエントに肝、腎(1つ)の移植を開始。

14:00移植術終了。





              一人の脳死患者から、四人に臓器移植
結局、一人の脳死患者から、4人のレシピエントに臓器移植が行われた。具体的には、

①    レシピエント:心臓
②   レシピエント:両肺
③    レシピエント:腎
④    レシピエント:腎、肝臓(私が見学した手術)

ちなみに、CCでは肺移植だけでも年間120件行っている。これは、脳死及び生体間移植も含むと思うが、2013年の日本での脳死肺移植は35件だけであり、この比較だけでいかにCCが肺移植一つを取っても桁違いの件数を実施しているのが分かる。



 

 

                  仲間との交流も財産に
今回の研修はアメリカの医療を学ぶのみならず、5施設(千葉大学、千葉県がんセンター、千葉県救急医療センター、千葉県循環器病センター、千葉県佐原病院)から研修者が集まったので、医療者のネットワークも更に強いものになったと思う。


 

 






 



 
予防接種も打ってきた



病院内のマクドナルド店
 
 
指輪をつけた看護師さんの手


          

  末尾になりましたが、この様な素晴らしい研修を提供していただいた、NPO千葉医療・福祉ネットワークの竜先生、片桐さん、風間さん、研修団体のリーダーとして多くの準備に時間と労力を費やしていただいた千葉県救急医療センターの山口先生に深く感謝していることをここに表したいと思います。