心臓手術の段取りにカルチャーショック
           手術看護師の働きで効率化
         研究中のテーマで発表の機会も
       

            千葉大学附属病院 心臓血管外科
                  渡邉 倫子


 



  
今回、千葉大学から研修に参加させて頂きました。研修は平日5日間の病院実習とその前後1日ずつの移動及び観光、飛行機内泊を含めた日程でした。私は心臓血管外科の手術見学、ICU/病棟見学、Cardiovascular Dynamics Lab (Dr.Fukamachi)の見学を行いました。




多彩な心臓術を見学

  Heart &Vascular Institute内4階にある手術室では60-79番までの20室で、心臓血管外科、呼吸器外科が手術を行っていました。今回の見学先の心臓血管外科Dr.Sabikの症例に加え、他興味のある手術の見学をしました。

  Dr.Sabikの症例でMICS(低侵襲心臓術) MVP(僧帽弁形成術)2例(FA送脱血)、CABG(冠動脈バイパス術)(50代男性、on-pump/arrest、5枝、LITA+SVG)、上行大動脈置換+AVR(大動脈弁置換)(バイパス3枝追加)、MVR(僧帽弁置換)+Maze(心房細動への手術)(cut&sew+cryoablation)。

   Dr.Johnstonの症例でMVR(僧帽弁置換)(40代男性、CEP25mm使用, 1y.oでAVP(大動脈弁形成術)既往あり), CABG(冠動脈バイパス術)(on-pump、LITA+SVG, 胸腺腫radiation後)。

   Dr.Kosseriの症例でredoTAR、他、TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)、Heart MateⅡ(植込型補助人工心臓)植込術等でした。Pump(人工心肺使用)症例で驚いたのは、weaning(人工心肺からの離脱)の早さで手術が終わると内容に関わらずあっという間にpump-off(人工心肺離脱)してカニューレ抜去してしまう、そしてVf(心室細動)になってDCの嵐。Air抜きもなく、エコーで多量のairで困った時に心尖穿刺しており、カルチャーショックを受けました。

  CABG(冠動脈バイパス術)はtarget5枝でも若年でもITAは左のみ、後はSVGを使用して、arrest(心停止)で非常にいい視野で縫っていました。MICS(低侵襲心臓手術)の症例では遮断鉗子や結紮のデバイス等、日本で見慣れないものがあり写真に納めてきました。

                  
手術スタートは早朝6:50

  手術開始は早く、1例目の入室は6時50分位(早い!)。Dr.Sabikは午前がMVR(僧帽弁形成術)とCABG(冠動脈バイパス術)の場合、同時に入室させ、まずフェロー同士かPA(看護師)が開胸やgraft採取をし、術者がメインの場面で入る。1つ目の部屋が終わると拡大鏡とライトをしたまま手洗いに行き、次の部屋に移る。そして2例を昼までに終えるといった感じに非常に効率よくやっていました。日本との大きな違いはPAが前立ちやgraft採取など割り振られた仕事をSystematicに行っていることでしたが、アメリカのどの病院でもPAのシステムが発達しているわけではない様子で、大きなセンターであるCleveland clinicならではとの話でした。Hybrid OR(血管造影と手術が両方できるオペ室)でのTAVI(経カテーテル大動脈弁植込術)も運良くvalveを置く瞬間に立ち会うことができました。

  Dr.の話では年間120-150例位で、open conversion(開胸術)は年1回あるかどうかだけど、そうなった時のために準備はfullでしている、と強調していました。いくつもの手術を見学でき、また直接いろいろなお話も伺うことができ、本当に勉強になりました。



                      


                       


               


深町先生のラボで研究発表

 13日木曜の午後を使ってCardiovascular Dynamics Labの見学をしました。深町先生から人工心臓の歴史と現状について説明を聞き、古い型から最新の型まで実物を見せてもらい、理解が深まりました。深町先生には今回の研修前に9月に横浜で開催された人工臓器学会でお会いしていました。この時私が学会発表していたテーマ(心原性ショック症例に対する補助循環治療について)を今回の研修の際に研究室で発表してはどうかと提案があり、発表内容に日本の心移植やVAD治療の現状も加えてプレゼンテーションをさせて頂きました。研究室見学では開発・研究している両心補助のデバイスについて開発者の方から説明を受けました。通常難しい左右の補助量の調節は、圧をセンサーし内部の羽車の位置を移動させ補助量を調整することで可能となる仕組みでした。臨床での課題が研究の成果によって解決される、そういったイメージがわいてくる機会でした。


                            


  今回Cleveland clinicの研修の企画、援助をして下さった医療・福祉ネットワーク千葉の皆様、またリーダーの労を執って下さった山口先生には本当に感謝に耐えません。13名という大人数であり、旅行の道中ではいろんなトラブルもありましたが、振り返るといい思い出です。他施設の方々との交流ができたことも自分にとっては大変有意義な機会であったと思います。どうも有り難うございました