日本が誇る胃がん術を紹介
      腹腔鏡下術の利点と問題点を実例とともに解説
        看護、医工学の視点からもアプローチ

        スタンディングオベーションに立ち尽くす…
         日本の最先端医療が関心の的
           

       千葉大学フロンティア医工学センター 教授
                林 秀樹


 


 

  平成25年10月31日から11月4日までの5日間、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉からご支援を頂き、竜先生と千葉大学医学部附属病院手術室の看護師2名と共に、アメリカ・ミシガン州デトロイトで開催された第2回St. John Providence Health System, GI Cancer Symposiumに参加して参りましたので、この貴重な経験をご紹介したいと思います。

  今回のお話は、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の理事長である竜先生からご紹介頂いたもので、11月2日に開催予定のGI Cancer Symposiumの席で、日本の腹腔鏡下胃癌手術の話をして欲しいというものでした。このシンポジウムはSt. John Providence Health Systemが主催する教育プログラムであり、肝・胆・膵・大腸の最新の知見と医療の実際が紹介される内容となっておりました。デトロイトにあるプロビデンス病院外科のAssociate ChairであるDr. Michael JacobsがプログラムのDirectorを務め、旧知の間柄であった竜先生を通じて私にご依頼を頂いたものでありました。

           10年間の腹腔鏡下胃がん術の経験をまとめるきっかけに
                手術室看護師との協働の取り組みも紹介へ

  私自身は千葉大学先端応用外科(第二外科)において、この10年間腹腔鏡下胃癌手術に携わり、300余例の経験ではありますが、安定した手術成績も得られるようになり、これまでの苦労をどこかでまとめなければと思っていた矢先でありましたので、第二外科の恩師である竜先生からこのお話を頂いたときには、一も二もなくお引き受け致しました。

  当初から、看護師も一緒に連れてきて欲しいというお話があり、これまで大学病院で腹腔鏡下胃癌手術の円滑な導入を図るため、手術室看護師と様々な連携をしてきた経験も紹介できる良いチャンスであると思いました。そこで竜先生と相談し、平成24年の内視鏡外科学会において「腹腔鏡手術における器械の受け渡し方法標準化の検討」と言う演題で優秀演題賞を受賞した大山ゆかり君と、手術室認定看護師を取得し、日本手術医学会誌に「手術室看護師の腹腔鏡手術に関するキャリア別意識調査」と題する論文を公表したばかりの亀田典宏君の2人を同行し、それぞれの経験も併せて発表してもらうことに致しました。


              開発中の近赤外蛍光生体イメージを利用した手術システムも解説

  講演にはkeynote lectureとして45分の時間を頂きました。内容は、千葉大学先端応用外科で行っている腹腔鏡下胃癌手術の詳細、腹腔鏡下胃切除術における医師と看護師の協働に関する取り組み、腹腔鏡下胃癌手術を支援する医工学技術、の3つのパートから構成することと致しました。最初のパートでは、発生学に基づいた胃周囲の膜解剖に忠実な日本の胃癌手術の詳細を紹介すると共に、腹腔鏡下胃癌手術の利点と問題点について、千葉大学の導入から現在に至るデータを元に解説を致しました。2番目のパートでは、亀田君が看護師の意識調査に基づいた新しい看護師教育方法の考案について、また大山君が手術器具の受け渡し方法の標準化の意義について話をしてくれました。最後のパートでは、私が現在フロンティア医工学センターで開発を行っている、近赤外蛍光生体イメージングを利用した新しいナビゲーション手術について概要を紹介致しました。

  本シンポジウムの参加者は、医師が58名、看護師が54名、放射線技師が5名、その他の医療関係者が7名と、総勢100名以上に及ぶものでしたが、発表の直後には、参加者全員のstanding ovationを頂き、慣れない大きな反応に3人とも戸惑いを隠せず立ち尽くしてしまいました。閉会後の懇親会の席でも各パートの詳細について様々な質問を頂き、アメリカにおいても日本の先端医療が強い関心の的になっていることを肌で感じました。

 




                        病院見学やパーティーで交流楽しむ
                竜理事長の70歳誕生日もお祝い

  シンポジウムの前後には病院見学やハロウィーンパーティーへの招待など、大山君や亀田君の手記にある通り、様々な歓待のプログラムが用意されており、3人とも大変驚かされました。この様なことになっているとは知らず、何の手土産も持たずに伺った自身らが恥ずかしく、帰国後、ささやかではありますが、写真にあるような京扇子を作製し、病院の皆様へのクリスマスギフトとさせて頂きました。

  今回は、私たちの人生においてまたとない貴重な経験をさせて頂いたように思います。これに加え、期間中に70歳のお誕生日を迎えられた竜先生(プロビデンス病院の皆様から最大限の祝福を受けておられました!)のお祝いの席に多少なりとも花を添えることができましたことは、とても光栄なことと感じております。旅費等のご支援と共にこの様な貴重な機会を頂きました竜先生とNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。