手術医療向上で医師と看護師が協力
          日本のチームワーク力、再認識
             米国では珍しい…

        ナース・プラクティショナーの働きに注目
           スタッフの多さに目をみはる
                    

          千葉大学附属病院 看護部(手術部)
            手術看護認定看護師
              亀田 典宏 

 


 

   今回の海外研修は、NPO医療福祉ネットワーク千葉のご指導ならびにご支援と、同理事長である竜崇正先生、また竜先生のアメリカの友人であるMichael Jacobs医師のご協力により実現しました。

 研修の目的は、千葉大学医学部附属病院で腹腔鏡下胃癌手術をされている林秀樹先生に同行し、デトロイトのProvidence病院グループの学術集会にて私たちがこれまで取り組んできた腹腔鏡下手術における医師と看護師の協働をプレゼンテーションするということでした。また、アメリカでNurse Practitioner という重要な役割を担う専門看護師であるMs. Lauri Boloに案内をして頂き、Providence病院の施設全体や、手術室にて手術室看護師の働く様子を見学させて頂く予定を組み入れてもらうことができました。

  以下に、その研修報告を致します。


            まずは、Dr.Michael Jacobsの自宅で
                 ハロウィンパーティーを楽しむ
         「Trick or treat」 の大歓迎 アメリカならではのイベント楽しむ

 
  
10月31日(木)

  ロサンゼルスでの乗り継ぎもあり、日本出発より約24時間かけて目的地のデトロイトに到着しました。ホテル到着は現地時間で午前8時でしたが、長距離移動の疲労により到着後しばらく休息をとることとしました。

 この日は研修予定が組まれておらず、夕方からMichael Jacobs医師の自宅にてハロウィンパーティーに参加させていただくことになっていました。そこで、午後はデトロイト美術館(Detroit Institute of Arts, 通称DIA)にて芸術鑑賞を行いました。特にアメリカ出身の芸術家の作品が多く収められており、その規模はアメリカでも3番目を誇っているそうです。夕方になり、Michael Jacobs医師の自宅を訪問すると、様々な衣装を身にまとった子供達が出迎えてくれました。パーティーが開始すると、子供たちは「Trick or treat」と近所の家を訪問し、お菓子をもらいに駆け回ります。それを迎える大人たちも変装やイルミネーションなど、様々な工夫を凝らして待ち構えます。アメリカではクリスマスに次いで大きなイベントということで、地域一体となって盛り上がっている様子が印象的でした。日本では体験する事の出来ない貴重な体験でした。



              一般病棟、ICU、化学療法室などを見学
                他職種が効率よく働く現場に驚く
           手術室、体内異物遺残の安全対策、感染対策など参考に

  11月1日(金)

  Providence病院の施設見学と手術看護見学を行いました。施設見学では手術室だけでなく、一般病棟・ICU・化学療法室などの見学を行いました。その際に、特に感じた日本と異なる点は、働くスタッフの多さでした。医師や看護師の数はもちろんの事、補助業務者が充実しており、各職種が連携し効率良く働いているという印象でした。手術看護見学では、体内異物遺残などの安全対策、アイガードや手術時手洗いなどの感染対策、器械出し看護師・外回り看護師のスキルなどに関して見学を行うとともに、情報交換を行うことが出来ました。体内異物遺残に関連したガーゼ・器械カウントの方法などは自施設に持ち帰って活用したい内容であり、とても有意義な時間でした。

初の英語プレゼンに緊張
「腹腔鏡下手術に対する意識調査」
「腹腔鏡下胃切除手術における器械出し看護師の技術向上


  11月2日(土)

  研修最終日、今回の研修のメインイベントであるSt. John Providence Health System GI Cancer Symposium 2013 に参加しました。様々な領域の医師が自身の専門分野における診療実績や治療方法などを発表していました。このなかで林秀樹先生の胃癌に対する腹腔鏡下手術の発表の一部で、千葉大学医学部附属病院で行われている腹腔鏡下胃切除手術における医師と看護師の協働に関する発表を、私と私の同僚である大山ゆかり看護師と共に行いました。発表内容は「腹腔鏡下手術に対する意識調査」と「腹腔鏡下手術における器械出し看護師の技術向上」に関するものであり、前者は手術医学会誌掲載論文、後者は2012年日本内視鏡外科学会優秀演題を受賞したものでした。自身初めての英語によるプレゼンテーションということで様々なプレッシャーがありましたが、なんとか発表を終えることができました。発表終了後、Providence病院グループの看護師と情報交換を行う中で、医師と看護師が協力して手術医療の質向上に向けた取り組みを行うことはアメリカでは珍しいということを伺いました。医療の進んでいる印象が強いアメリカなのに意外だなという印象でしたが、自分たちの取り組みに自信を持つことができました。このような機会に巡り合え、貴重な経験を得ることができたことに感謝したいと思います。

 この海外研修の機会を与えてくださった、竜崇正先生、林秀樹先生をはじめ、NPO医療福祉ネットワーク千葉の皆様、そしてProvidence病院の皆様に、改めて感謝申し上げます。