がん拠点病院と地域医療機関の連携 道半ば

 
「経過観察、拠点病院の方が安心」7割
 
「人生の最期も病院で過ごしたい」 7割

 千葉県がん患者大集合200
 がん患者によるがん患者のための集会
    


   がんの経過観察はやっぱり治療を受けた大病院で―。9月6日に千葉市内で開かれた「千葉県がん患者大集合2009」では、患者さんから手術などを受けたがん診療連携拠点病院での治療継続を望む声が多くあがりました。大きな病院の医師のもとで検査などを続ける方が安心できるとの認識が強く、治療後の療養や定期検診は住みなれた地域の医療機関にバトンタッチする仕組みを整えたい国や県の計画浸透にはまだ時間が必要なようです。

    

 昨年に引き続いて二回目の開催となった患者大集合には、県内外からがん患者さんや家族、医療関係者ら約350人が参加。「最善のがん医療を受けるために」をテーマに、患者さんが必要としている治療、相談体制などについて考えました。パネルディスカッションでは、参加者が「はい」「いいえ」を座席に設置されたボタンでリアルタイムに答えるアンサーパッドを活用。その回答をもとにがん拠点病院の医師や相談員、ソーシャルワーカーらが意見を交わしました。

―人生の最後も病院で過ごしたい―

 治療後に経過観察してもらいたいのはどこ? との質問に「治療を受けた拠点病院」と答えたのは72%、「近所の診療所や病院」としたのは28%。また、ターミナルケアを含め人生の残りの時間を過ごしたい場所についても、「自宅」が49%、「ホスピスなど医療機関」が51%となり、がん治療は病院で、できれば大きな専門病院でといった考え方が根強いことがうかがえます。船橋市立医療センター緩和ケア内科の野本靖史副部長は拠点病院や大きな病院では通院や待ち時間の負担も大きいと強調し、「定期的なレントゲン、血液検査などは地域の診療所でも十分対応できる」と自宅に近い医療機関の活用を促しました。

 

 千葉県のがん対策推進計画でも、拠点病院と地域の医療機関との間で、患者さんの病状の診断や治療の役割分担について記した地域連携クリティカルパスをやり取りできる仕組みを整えることが明記されています。県健康福祉部健康づくり支援課の山崎晋一朗課長は「病院、地域の診療所、自宅など患者さんが過ごす場所の選択肢を増やすことが大切」と強調しました。

 

―相談支援センター利用 25%―

 このほか、各拠点病院内に設けられたがん相談窓口(相談支援センター)についても取り上げられました。がん相談支援センターを知っていますか? との質問に対して、「知っている」と答えた患者さんや家族は38%。実際に利用したことがある人は25%で、各拠点病院での窓口設置とともに相談サービスもじんわり浸透してきていることがうかがえます。患者さんが望む相談相手としては、家族や友人(41%)に続いてがん患者体験者が33%に上り、患者さん同士同じ立場で悩みを分かち合うピアカウンセリングのニーズが高いことが分かりました。

 

 この日は、シンポジウムのほかに県がんセンター長の中川原章氏が県内13ヵ所の拠点病院の取りまとめ役に位置付けられている県がんセンターの医療や取り組みを説明、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター内科教授の上野直人氏が「最高のがん医療を受けるための患者学」と題して講演しました。

特別セミナーでは千葉大呼吸器内科准教授の滝口裕一氏が分子標的治療薬など投薬治療の新しい考え方について紹介。患者さんによる体験談のほか、男声合唱団「コールJUN」のコーラスも披露されました。

 

 患者大集合は県内の患者団体が中心となって開催。眞島喜幸実行委員長は「患者さんや家族も最善の治療、医療を自ら選んでいく時代。患者さんも変わるきっかけにしていきたい」としました。

 

                 
  当NPO法人も、この千葉県がん患者大集合の実行委員会に参加、協力しています。当日は多くのご参加をいただきありがとうございました。