患者さん4割 「がんになってよかった」 がんに意味を見つけて前向きに生きる “医師で患者さん”2人が夢と希望語る 拠点病院と地域の診療所、連携はまだ浸透せず 第3回 千葉県がん患者大集合2010 9月5日 |
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がんになってよかった―。9月5日に千葉市内で開かれた「千葉県がん患者大集合2010」では、長い闘病生活、死と隣り合わせといったマイナスのイメージを抱きがちながんを、「家族や友人への感謝の気持ちを持てるようになった」など何らかの意味を見出して受け入れ、前向きな気持ちでいる患者さんや家族が参加者の4割を占めました。その一方で、3割の患者さんは自分が現在受けている治療に不満を抱いていることも分かり、相談窓口の充実、がん診療連携拠点病院と地域の診療所との連携推進などがん医療の課題はまだ多く残されていることが浮き彫りとなりました。 今年で三回目の開催となった患者大集合。県内外から患者さんや家族、医療関係者らが参加しました。「がん医療の現実と理想〜がんになってよかった!と思いこむ?」をテーマに、がんの治療をどうしたら前向きに受け止められるかなどについて考えました。 |
〜 がん体験のドクターがきっぱり、「がんになってよかった」 〜 | |
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↑がんになってよかったと思い込むための ポイントを示す冨田さん |
がんの患者さんによる体験発表ではがんを患った千葉県内の2人の医師が講演しました。大腸がんや甲状腺がん、前立腺がんなどと付き合いながら脳外科医としても仕事を続けている冨田伸さんは「比較論になってしまうが、自分のパートナーや子供ががんになっていたら、事件や戦争に巻き込まれる運命だったら…などと想像すると自分はがんで良かったと思える」ときっぱり。しかし、一日一回は「死」が頭をかすめるという不安感といつも付き合っている胸の内も打ち明けて、「がんになっても角膜移植など人のために役に立てると思うことが救いになっている」と話しました。 また、眼科医の窪田伸矢さんは32歳で胸腺腫を患い、再発と治療を続けながら自分のがん体験をブログでつづっていることを紹介しました。窪田さんは「自分ががんになったことをきっかけに患者さんへの接し方も変わった。患者さんの気持ちが前より分かるようになり、医者としてはとてもありがたいことだと思っている」と語りました。 会場では、参加者が「はい」「いいえ」を座席に設けたボタンでリアルタイムに答えるアンサーパッドを使ってアンケート調査を行いました。患者さんや家族に「自分や家族ががんになり良かったと思えるかどうか」と質問したところ、44%が「はい」と回答。がん体験医の冨田さんや窪田さんの講演を聞いた後に、それまでは必ずしもがんを前向きにとらえていなかった患者さんと家族に対して「がんになって良かったと思いこんでみるのも悪くないと思ったかどうか」と質問したところ、43%が「はい」と答え、気持ちを切り替えていくきっかけ作りができたことも分かりました。 |
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〜医療関係者68%、大きな病院での経過観察を望む〜 |
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↑「治療後の経過観察はどこでしてもらいたいですか? 患者さん・ご家族の41%、医療関係者の68%が治療を受けた病院と答えました。 |
4年前に施行された「がん対策基本法」では、がん治療についてがん専門病院と地域の診療所が連携し地域全体で取り組むことが盛り込まれています。会場のアンケートでは、患者さんや家族に手術などの治療を終えた後の経過観察をどこで受けているか聞いたところ、94%がそのまま大きな病院で治療を続けていることが分かりました。続いて、医療関係者に対して、「自分が患者になったら治療を受けた大きな専門病院と地域の診療所とどちらで経過観察を続けたいか」という質問を投げかけたところ、68%が治療を受けた大きな病院と回答し、患者さんや家族の立場になってみると、地域の診療所でがん治療を続けることにはまだ抵抗があって、地域連携が進んでいないことが浮き彫りとなりました。 〜拠点病院の相談窓口の利用、3割にとどまる〜 このほか会場アンケートでは、受けているがん治療に不満を持っている患者さんは30%との数字がはじきだされました。また、患者さんなどへの情報提供や拠点病院にある相談支援センターの活用もまだ道半ばで、拠点病院の相談窓口を利用したことがある患者さんは3割にとどまりました。千葉県や全国のがん対策の進捗状況を説明したがん政策情報センター長の埴岡健一さんは、「千葉県は日本全体の平均ぐらい。まだまだ進んでいない面も多く、取り組みを強めて結果を出していかなければならない」と叱咤激励しました。 |
この日はほかに、千葉県がんセンター地域連携室長の浜野公明さんが拠点病院と地域の医療機関の間で患者さんの病状や治療について役割分担を示した地域連携クリティカルパスについて説明し、浸透を呼びかけました。地域の診療所の立場からは市原市のショッピングセンター内にある乳がん治療を中心とした診療所コスモスクリニックの院長・押田恵子さんと看護師の石井典恵さんが講演しました。薬局の立場からは千葉県薬剤師会副会長の真鍋知史さんが「かかりつけ薬局」を持って細かい相談などに来てほしいと勧めました。行政の立場から千葉県健康福祉部の山崎晋一朗健康づくり支援課長ががん患者の意識調査の結果を報告しました。
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特別セミナーでは、独立行政法人・重粒子医科学センター長の鎌田正さんが「重粒子線がん治療」と題して講演。最先端の治療の特徴とその普及に向けた取り組みについて紹介しました。大会の最後にはシンガーソングライターの松尾貴臣さんが、坂本竜馬の着物をまとって登場し、ギターを弾きながら歌って会場を盛りあげました。 |
↑松尾貴臣さん |
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会場となったホールのロビーでは、患者会や食品、医療機器などの企業がブースを出し、手作りの作品の販売やサンプルを配布してそれぞれの活動の様子を伝えました。 NPO法人・医療福祉ネットワーク千葉では、フレンチの手法を取り入れた流動食「ケアフード」の試食300人分用意し、患者さんや家族に提供しました。 千葉県がん患者大集合2010の実行委員会は、アンケート結果と大会宣言をまとめて行政などに提出することにしています。 当日はたくさんのたくさんの方にご来場いただきありがとうございました。 |