【千葉県がん患者大集合】2024.10.14 第15回千葉県がん患者大集合を開催。がん治療と妊娠、出産を両立できる医療とは。卵子や精子の凍結保存などを相談できる千葉大病院のリプロダクション支援センター。
第15回千葉県がん患者大集合2024は、10月14日(月)、千葉市文化センターでの会場とオンラインのハイブリッド方式で開かれました。「がんと生殖医療」をテーマに、がん治療をしながらも妊娠や出産するという選択を可能にする最新の医療や研究について2名の医師が講演しました。千葉県がん患者大集合実行委員会が主催し、当NPO法人も共催団体として参画しました。
がん治療を優先しながらも、妊娠・出産・育児をあきらめない
最初の講演は、千葉大学大学院医学研究院産婦人科学教授の甲賀かをり先生。「産婦人科医の立場から」と題して、将来の妊娠に向けた健康管理“プレコンセプションケア”やがんと妊よう性(妊娠・出産する力)の関係、妊よう性温存療法について説明しました。様々な社会変化により、女性が出産する年齢が上がってきたこともあって、出産時期とがんや自己免疫疾患、生活習慣病などにかかる時期が重なるようになったため、より出産に向けた身体的や事前の準備「プレコンセプションケア」が必要になっているとしました。その一つとして卵子の凍結という選択肢があることを紹介。がんそのものが妊よう性に与える影響はわずかだが、抗がん剤治療などが卵巣機能の低下につながることはあるとのこと。甲賀先生は「医療の進展でがんの生命予後は良くなっている。がん治療は最優先に考えて欲しいが、出産育児もあきらめなくても良い医療や体制が十分整っている。まず私たちに相談してほしい」と話しました。
続いて、千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学教授の市川智彦先生が「泌尿器科の立場から」と題して男性側の妊よう性について講演しました。喫煙や過度の飲酒、肥満、ストレスなどにより男性不妊症になることもあり、また、抗がん剤治療が原因となることもあることを説明しました。治療に入る前に精子の凍結保存などの選択肢を持つことも有効であるとしました。市川先生は「妊娠・出産をするのは女性側になる。男性側は凍結した精子を提供できればそれでいいという考えではなく、夫婦やカップルで協力して出産・育児に臨むという意識は忘れないで欲しい」とメッセージを伝えました。
千葉大学医学部附属病院 リプロダクション支援センター
千葉大学附属病院では、2024年4月からリプロダクション支援センターを立ち上げました。甲賀先生がセンター腸を務めています。治療と妊娠・出産の両立や卵子凍結など、妊娠を希望するカップルに向けたワンストップの相談窓口となります。
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千葉県がん・生殖医療ネットワーク(COFNET)
卵子や精子の凍結保存についての情報提供をするサイトです。千葉県内で治療やサポートができる医療機関についても掲載されています。
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精子保存が治療の支えに
患者大集合では、がんを体験した患者さんの立場として、NPO法人がんノート代表理事の岸田徹さんが実際に精子の保存をした経験について話しました。社会人として忙しい毎日を送っていた25歳の時に胚細胞腫瘍(胎児性がん)にかかり、告知された時は体のあちこちにがんがある状態で薬物療法をせざるを得なかったため、医師から精子保存について提案を受けたという。がんの治療と精子の保存と両方を一度に考えなければいけない局面だったが、ブログなどを検索して問い合わせ、精子保存についての情報を集めたという。それで、両方挑戦しようと思ったとのこと。治療も、精子保存をしたことが支えとなり続けることができたそうです。その後、結婚し、凍結保存した精子を使ってお子さんも授かったとのこと。岸田さんは「がん治療は先が見えない不安や怖さにさいなまれることもあるけれど、医療やほかの体験者の情報にアクセスして諦めないでほしい」と語りました。岸田さんは、「がんノート」というがん体験者のリアルな声を動画やイベントなどで届ける活動を続けています。
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千葉県がん患者大集合、当日はフリーアナウンサーの帆足由美さんが司会を務めました。