【Dr.竜が深掘り!読み物編】第四弾 がん患者さんに寄り添う抗がん剤治療-動画対談を読み物にしました
【Dr.竜が深掘り!千葉発 令和のがん医療】
第四弾 読み物編
がん患者さんに寄り添う抗がん剤治療
山田みつぎ氏(がん看護専門看護師・千葉県がんセンター副看護局長)
浅子 恵利氏(外来がん治療認定薬剤師・千葉県がんセンター薬剤部)
竜:今日は千葉県がんセンターで行われている化学療法、薬物療法に積極的にかかわっていただいている薬剤師の浅子さんと、看護師の山田さんに、いかに安全に患者さんに適切な治療を受けていただいているかについてお話いただきたいと思います。
千葉県がんセンターの特徴というと、電子カルテシステムを導入して、職員の誰もが見やすい形でのオーダーができるようになっていることがある。レジメン(治療計画)がきちんと作成されている。治療法に関しては、ガイドラインがあるので、どこの病院でも同じような治療が受けられるということにはなっていますが、実際には同じ治療でも副作用もあるし、患者さんの受け止め方もある。抗がん剤が怖いという患者さんもいる。近藤誠先生のような変な先生がいて、がんと闘うな、抗がん剤をすると死んじゃうみたいなイメージが植え付けていて、いまだにその本がベストセラーになっている。そういう中で、患者さんに勇気を持って正しい知識を持っていただ適切な治療を受けて頂ければ、そのおかげで、現在は皆さんびっくりするぐらい生きられるようになっている。ただ生きられるのではなく、元気に生きていらっしゃる。それは新しい治療法の発見、特にオプチーボのような免疫チェックポイント阻害薬の発明がノーベル賞をとって、肺がんのような治らないがんの治療も変わってきた。浦安で末期の肺がん患者さんを診ていますが、全然看取りにならない!。そのくらい元気になってしまう。もう末期だからだめなんじゃなくて、いろいろな治療方法があって、それなりに健康で充実した生活を送れるような時代になってきた。そのあたりのお話を伺いたい。
まず、チームとしての役割がありますよね。医者がオーダーを出す。実際はそこからどんな治療になりますか。
抗がん剤治療の流れについて
浅子:まず、医師が標準治療の中から、こんな治療法があるという方法を提示して、その中でこれがオススメというのはあるのでしょうけれども、最終的には患者さんがその中から選ぶ。副作用と効果とその兼ね合いを考えて選択しますね。
竜:治療法を選択した後に、看護師さんが最初に一緒に立ち会いますか。
山田:最初、外来に患者さんがいらした際に、「副作用はこんな時期にこんな風にでますよ」とか、患者さんは日常生活を送りながら治療を受けられるので、この治療を受ける場合は、日常生活にこんな影響が及ぶかもしれませんね、というような工夫点を示すというのを、まず外来で行います。看護師や薬剤師が治療初日から関わり、副作用や日常生活への影響、工夫点をていねいに説明します。
竜:手術できない患者さんについての治療として、薬物療法を行う際に、医師が治療法を提示した後に、看護師さんが詳しい説明をするということですね。だいたいその治療に行くまでに何回くらい説明しますか。説明は一日で済みますか?
山田:だいたい1日で済むことが多いですが、患者さんの中には迷われる方もいます。迷われたり、相談したりする時間は設けるべきと思います。次の治療日、一週間から二週間後には、私はこの治療法を受けたいです、と二回目の受診日には大体決めてきますね。
竜:最初の時間に丁寧に説明して、患者さんが決めやすい様に工夫しているわけですね。薬剤師さんは治療が始まってからの説明になりますか。
浅子:現在は、最初の治療日に患者さんがこられた際に、薬剤師が関わるようにしていますが、最初の看護師が説明した際の記録や先生が説明した際の記録を読んで、患者さんがどういう不安を持っているか、そういったものを確認した上で、先生がどのような説明をしたか説明要旨も確認した上で、薬剤師として話す内容を検討する。患者さんのベッドサイド、あるいは診察室(薬剤師用に一ついただている)で、患者さんもしくは家族もお呼びして、今後自宅で起きるかもしれない副作用なども説明します。
竜:治療が始まる時には薬剤師さんが関与して一緒にやってくれているということが患者さんも分かる。そこが大きいですね。昔は、医者の話だけ聞いて、看護師さんが横に立っているだけという状態だったから。今はもう、専門看護師とかがいて説明してくださる。看護師はニアリーイコール患者さんという立場でもあるので、医者対患者さんというのではなく、傍に患者さんに近い立場の人がいるということで、患者さんがすごく安心する。さらに薬剤師さんがいる。それも大きい。
現在、個人情報とかなんとかでうるさくて、下手すると同じ病院の職員でも患者の情報を他職種が見られないことがあるからね。患者さんの人権を守り、個人情報や秘密を守るのは医療者の義務ですよね。そんなこと当たり前。それを病院のシステムの中で縛って見られないようにしてしまうのでは病院としてのチームはできないようになる。みんなが患者さんについての大事な情報、どんな治療をやるかだけでなく、その治療に対して患者さんはどう思っていて、どんな点が不安なのか、ということが分かっていないといい治療はできないよね。情報共有がきちんとできていることが非常に重要だね。
昔は、カルテ書かない医者がいた。書いても、読めないのも。ぐちゃぐちゃ、ドイツ語もどき、英語もどきで。電子カルテになって、最近はみんなカルテにきちんと書いているみたいだけどね。患者さんは先生が電子カルテばかり見ているっていうけれども、きちんと日本語で書かれていて、みんなが理解できるような状態になっている。それがチーム医療の原点。IT システムで、皆で情報共有できるようになった。
電子カルテで医師、看護師、薬剤師が「患者さんの不安や思い」も共有
山田:看護師が書いた記録を先生がご覧になって、『「こういう不安がある」って書いてあるけど、どういう不安なの?』と先生が聞いてくださったり、薬剤師さんが書いた記録を見て先生が、副作用が強すぎるから少し抗がん剤の量を減らそうかとオーダーを決めたり、ものすごく情報をみんな共有がしやすくなっている。それが患者さんの利益につながっています。
竜:看護師から薬の量を減らした方がいいということもあるのですか?
山田:ちょっと副作用が強すぎる、しびれが強いのでいかがですかね?―と言うと、先生がそんなに強いんだ、じゃあ少し減らしてみようかというのはある。
竜:うまく言えば、ちゃんと伝わるんですね。そこはチームだもんね。医者はオーダーを出して、効果はどうかというのを見るけど、患者さんは医者に対して強がっているところあるか。本当の姿を見せないよね。診察室出た後に、「あの時、本当はこんなことも言いたかったけれども言えなかった…」って落ち込んでいる人が結構いるよね。そういうのにもちゃんと対応したいね。そのあたり、看護師への教育に、何か工夫されていますか。
山田:最初はやはりスタッフ達も「先生にそういうことは言えないですよ…」「越権行為なんじゃないですか?」と言っていた。でも、実際に先生と情報共有ができて、その結果患者さんがすごく楽になるとか、安心したという成功体験をスタッフも得られると、自分たちももっと勉強して副作用対策に強くなろうとか、先生にこういう伝え方をしたら受け入れてもらえるんだなと、肌で感じてもらえる。
竜:副作用対策は、薬剤師とも相談してある程度決まっているんですよね。
抗がん剤の副作用対策、オリジナルの処方箋セットを作成
浅子:オンコロジーチームの中で、吐き気にはランクがあるので、この吐き気にはこうしたらいいだろうとか決めていきました。ガイドラインができる前から対応策を作っていきました。電子カルテのいいところですけれども、高リスクであればこの吐き気止めとセットとか、中リスクであればこの薬、低リスクであればこれ…というように全部セット登録ができた。コメントも全部記録したものがセットになっている。先生が選ぶと、処方箋が全部セットで出てくる。
竜:千葉県がんセンターで作ったのですか?
浅子:そうです。そういうのを作る権利をいただいていたので、チームの中で、こうやるとこの副作用が楽だとか、これが必要だとかというものをレジメン(治療計画)ごとに決めてセット化した。そのセットに名前を付けて電子カルテに登録すると、押すだけで処方が出来上がってしまう。先生も楽だったと思うので使ってくれた。支持療法の標準化が、がんセンターではできていたので、後につながる副作用カレンダーや指導書も一種類作れば処方箋まで全部いっぺんにできてしまうというメリットがあった。
竜:当時は支持療法のガイドラインなんて世の中になかったよね。
千葉県がんセンターが先行、副作用への支持療法を独自に編み出す
浅子:がんセンターではガイドラインに先行して作っていた。看護師さんが副作用のチェックを決め細かくしてくださったので、それに合わせた支持療法を提案もできるし進めやすかった。
竜:それね、たぶんね、ガイドラインって出しっぱなしなんだよね。本来は評価して、それがいいか、きちんとやっていかないと支持療法の標準化ってできないと思うんだよね。
浅子:がんセンターでは、医師、看護師、薬剤師それぞれがした評価をまとめていった。
山田:患者さんの副作用がいつどのくらいの強さで出るかというのをチェックして、その結果を書いて集計して、この抗がん剤だったら何日目にどんな吐き気が出やすいとか、出しました。
竜:それは自分たちの経験からエビデンスを作っていったということですか。
山田:そうですね。
竜:それはすごいね!。私は浅子さんに講演原稿についていろいろ相談した際に、副作用予想カレンダーを見せられて驚いた。副作用についてものの本に書いてあるものではなくて、実際の治療経験から何日目にこんな症状が出たとか全部集計した結果なんですね。
浅子:本に書いてあるものは範囲が広すぎて、実際はどの時期が強くてどの時期が弱くては全く分からない。もう少し、患者さんが生活しやすいように濃淡をつけて、一番副作用が出やすい時期とそうでない時期と濃淡をつけました。
竜:それは本当に素晴らしいね。私、浦安に行ってから看取りをやっている。今までやったことないから参考になる本がないかなと思ってみたけれども…ないんだよね。総論(サンダースさんが書いたような)は書いてあるけれども、具体的な自分たちのエビデンス、経験に基づいたものはなかなかない。緩和医療の中では少ないと思う。それを自分たちでエビデンスを作ったということはすごい。項目などは、患者さんからの症状のコメントをもとに、そこからまた抽出していくわけですか?
山田:そうですね。しびれとか、吐き気とか、味覚障害とか全部患者さんがつけてくださった。例えば、この治療の3日目や4日目に一番強く副作用が出るとおっしゃっていたら、そのデータを全部集めて、その時期に集中して吐き気止めを使うとかできますよね。
竜:それは何かシートみたいなものを使うのですか?
副作用ごとに症状や出やすい時期をモニタリング
山田:そうですね。抗がん剤によって副作用の出方が違うのですが、だいたい8種類ぐらいの副作用に分けてつけてもらうのですが抗がん剤の種類によって副作用の項目を変えている。患者さんにとっても20以上の副作用の項目について毎日症状を記録するのって患者さんも大変なので、例えばこの薬(治療)だったら、しびれ、皮膚、吐き気が出やすいということであれば、その項目を重点的につけてもらうというようにします。
竜:昔はよく抗がん剤治療で亡くなった方もいたんですね。それは、薬のオーバードーズで亡くなった。医者の方としても薬がすごくきいて、がんも消えたからもう一押しとなってしまう。でも、骨髄抑制がひどくて、そこをもう一押ししてしまうと亡くなっちゃう。それが、「患者よがんと闘うな」というような近藤真の本につながる。 骨髄抑制が化学療法の問題点だったんですけれども、今はもう命が亡くなるまでやらないレベルで、治療が行われているんですね。
山田:すごく先生方も、検査のデータを見ながらちょっと強すぎたから今回は量を減らそうかとか、あとは白血球が減りにくくなるようなG-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子の製剤)のような薬も開発されている。
竜:今はシビアな骨髄抑制はほとんどないですか?
山田:中にはありますけれども、そうならないように予防的にG-CSFを打っています。
竜:患者さんのデータをきちんと把握して、具合悪くならないように事前に防ぐ体制ができているということですね。支持療法ではほかに具体的にこのタイミングでこれをするといいというものはありますか。
浅子:現在は、この治療をやったら、3割以上の人で抗がん剤による好中球減少症があると解るので、事前に必ず対策をしています。3週間かかるものを2週間に縮めて治療した方がいいようなものも、あらかじめ薬を打っておいて、好中球減少、発熱を起こさないように予防しながら治療を進めています。
竜:骨髄抑制が起きやすい時期には、必ず検査を行うということを決めているんですね。
浅子:骨髄抑制を起こすと言われる薬をつかっているわけではない時期でも、そういう可能性がある場合には検査をする。そういう形で安全をみている。
竜:安全第一で見ていると。
副作用カレンダー、治療を受けた患者さんのデータを積み上げて作成
浅子:内服の抗がん剤TS-1 やゼローダなど内服の抗がん剤が急速に広がるようになって、ご家庭で飲むようになった。それを調剤するのが薬局になった。例えばTS-1は添付文書上には4週服用して2週休薬としか書いていないのですが、臨床試験だと2週間服薬1週間休薬するとか…いろいろなパターンが出てきた。それを知らずに間違って服薬してしまい、オーバードーズになってしまうと命にかかわってきてしまう。きちんとそれをチェックしてほしいなと。治療死や治療危険を少なくしてほしい。術後や術前の補助療法をしているのであれば、再発率はちゃんと低くしてほしい。そういう思いから、ちゃんと連携したいと副作用カレンダーを作りました。
竜:私それ一番最初に聞いた時にびっくりしたのは、市内の調剤薬局に全部アンケートしましたよね。こういう条件だったら千葉県がんセンターの調剤薬局として連携できるとか、全部聞いているんですよね。私、施設長の時に、薬剤師さんが調剤してその労力を費やすのは大変だと思って、全部院外処方にした。院外処方にしたら、すべての薬局を千葉県がんセンターがただで雇っているのと同じなわけ。その分、薬剤師さんは患者さんと向き合ってよりよい抗がん剤治療、化学療法をやって、患者さんの安全を守ることに集中できる。そう思っていたが実際に何をやったか分からなかた。すべての調剤薬局にアンケートを取ってこういう条件だったら、こういう協力をする…こういう話ですよね。
院外処方の導入に合わせて、調剤薬局へのきめ細かいアンケート調査を実施
浅子:院内の治療は電子カルテに入れるとその通りの処方が出てくる。標準量ということで処方できる。ところが、内服薬に関しては先生がオーダーで入れるので、それが休薬期間を間違って入れていても、投与量を間違えて入れていても、外の薬局は何の情報もないので、チェックのしようがない。そのまま処方箋が院外に出てしまうと、患者さんが危険に陥ってしまう。
投与量が少なすぎれば効果がなくて再発してしまうこともある。一番いい状態で治療をしていただくためには外の薬局にちゃんとチェックをしていただき、服薬指導をしていただく必要がある。ちゃんと副作用チェックしていただくという仕組みづくりが必要だと思ったわけです。
それがそもそもの発端だった。どうすればつながるだろ
うかと。患者さんを通じて薬局にちゃんと伝えようとなった。まず患者さんにきちんと話をする。そして、いろんな資材をお薬手帳にくっつけて、副作用カレンダーも薬局さんにつながるようにと、そういう仕組みを作った。
お薬手帳に副作用カレンダーを貼り付ける
竜:副作用カレンダーは、お薬手帳か何かに貼るのですか?
浅子:現在は、副作用カレンダーを院外薬局の窓口に出してくださいと言ってます。その前は、内服の薬が含まれているものはお薬手帳に貼っていました。コストと手間がかかるので、副作用カレンダーを薬局に必ず提出してくださいとつないでいます。そして、内服薬についての情報はもちろんお薬手帳にも書いています。
竜:いい意味での医薬連携、薬薬連携ができていることですね。
浅子:薬局さんからも誉め言葉をたくさんいただきます。ぜひ全国に広めてほしいと言われます。
竜:お薬手帳見ると内服薬だけのように見えるけれども、実際は内服薬と点滴もやっているんだよね。副作用カレンダーを見て初めて分かる。
学会で薬局薬剤師からの指摘を受け…薬薬連携の重要さを思い知る
浅子:学会で薬局の薬剤師さんの発言から気づいたことなんですけれども。電子カルテでオンコロジーチームでの取り組みによって、連携できて効率的になり副作用も減って…という内容のことを学会でオンコロジーチームで発表したことがあった。その時に、薬局の薬剤師さんが、「チーム連携素晴らしいですね。ただ、薬局では患者さんがどのような説明を受けてきて、中でどういう治療をやってきたのか全く分からないので、説明のしようがないし困っている。外の薬局さんに情報発信しているのですか?」と言われた。当時は全然していなかったので、そこが非常に問題だと分かった。やらなきゃと思った。
竜:よくそこに気付きましたね。自分たちのオンコロジーチームの中で連携して、患者さんみて、うまくいっているとおもっちゃうよね。実際は患者さんは外の調剤薬局とも関わりあっているので、調剤薬局ではほかの点滴治療がどんなものをやっているのか、どんな感じか全く分からないんですよね。
浅子:ただ、当時薬剤師が12名しかいなかったので、調剤薬局に人を介して伝えることが本当にできなかった。思い切り手伝っていただいた。情報は作るけれどもあとは、これを使って患者さんに渡してください、薬局につないでくださいとやるしかなかった。
竜:素晴らしい。私、センター長当時は薬剤師の定員をふやしてほしいと県には全然言っていなかった…。申し訳なかったです…。薬剤師の定員増の部分は抜けていましたね。
「外来での抗がん剤治療と支持療法の両立が患者さんの命を守る」という信念
浅子:今でこそ加算がつくようになっていますが、当時は一円にもならなかった。病棟で、一回がん患者さんに指導すれば4000 円加算が取れる。病棟に行けばいいじゃないか、病棟を差し置いて外来の仕事をするなんてと、かなり言われた。でも、情報の少ない外来患者さんにきちんと正しい薬の量で正しい支持療法で治療を成功させてあげることが、絶対プラスになるんだという思いがあった。それをコストで表せなかったので、歯がゆい思いもしました。
竜:病院の滞在期間を短くして、集中して治療を行うこと。なるべく入院期間を短くする。回転率を上げて、多くの患者さんを入れることができる。そのためには治療の外来シフトは必須だった。外来だけ考えると経営がどうのといわれるけれども、全体から考えれば外来にシフトして入院には入院が必要な人を素早く入院させると、その両輪が必要だった。それを片方しか見てないのと、経営指導者と称する人が県から来るが…そういう人は経費削減と人員削減しか言わない。薬剤師と調剤薬局の連携がうまくいけば、治療が外来にシフトして、もしかすると入院患者さんへの指導が減り加算が減るかもしれないが、全体とするともっと多くの患者さんの治療ができる。よりよい入院治療ができるようになったんだと思う。いやー、感心します…。
山田:きっかけをたくさんいただいたので感謝しています。
竜:全国ではこうした薬薬連携はまだ行われていないですかね?
浅子:今は、加算も外来での指導加算が取れるようになったので、多くの病院で薬剤師による指導、連携が行われるようになってきました。
竜:浦安のクリニックでみていると、薬局の経営は大変。個人の薬局は減ってしまい、系列の薬局になってしまっている。個人の心ある薬局もいっぱいあるので、そういうところが千葉県がんセンターの試みに賛同して連携できれば、患者さんにとっても一番いいですよね。
先ほど、骨髄抑制の話がありましたけれども、この取り組みが進むことで骨髄抑制が少なくなっているのですか?それとも頻度としてはあるけれども、重篤化させていないということですか。
山田:骨髄抑制は一定の割合で出るのはしょうがない。そのために骨髄抑制感染症が発症する患者さんはものすごく減ったということになります。
竜:薬物療法の原点はがんが一番勢いがあるので、その代謝を抑制する。副作用として代謝の盛んな白血球や赤血球、粘膜も影響を受けてしまう。その副作用が起こりやすいということですね。たけど、それが命に関係ないように骨髄抑制をサポートする支持療法、白血球が減らないよにする薬が出てきて進歩したということですね。薬物療法をやって死に至るということがなくなってきている。薬物療法でどんな副作用が出てきますか。消化管ですかね。
山田:口腔粘膜炎や味覚障害、代謝が盛んな組織や臓器は副作用が出やすくなる。どうしても消化管粘膜の症状、下痢も起こりやすいですね。
竜:口内炎もベロベロにできると辛いですよね。どんな対処法がありますか。
山田:まずは歯科衛生士や歯科医に事前に口腔内の粘膜の状態をきちんと評価してもらいます。口腔内の最近数をきちんとバランスが整った状態にしてから治療を始めます。
竜:口腔ケアを全員やるようになった。素晴らしいですね。
山田:それプラス、どのタイミングでうがいをするといいか、など患者さんにきちんと説明して、納得いただきながら治療を進める。口腔内の細菌数のコントロールとケアです。この二つがうまくいけば口内炎も出にくくなります。
竜:吐き気止めなどの薬物も進化しましたね。
浅子:それはすごく進歩しました。外来でリスクの高い薬を投与してもほとんど吐くことはなくなった。悪心が辛くて薬止めたという人は今はないです。怖がる方はいますが、実際の症状としては出ないです。
竜:昔はナウゼリンぐらいでしたね。悪心も、出やすい時期に合わせて対策するのですか?
浅子:まず点滴の前にしっかり吐き気のリスクに合った制吐薬を入れていきます。どんなに吐き気の強い薬でも、すぐに吐き気が出るわけではなく、7~8時間後から出てくるころが分かっています。患者さんにはその旨を話しして、そのころに吐き気が来るかもしれないので、吐き気止めはその時から飲んでいただくとか、別の薬であれば四、五日は効果が続くので…次はいつごろどういう吐き気が出てくるかもしれないという予測になるし、それに合わせて食事は軽めにするとか。
竜:治療法によって、このくらいの時期にこういった症状が出てくるだろうと、それなら長く効くこの薬とかというようにするんですね。
浅子:逆にほとんど吐き気がないものもあるので、過度に吐き気を怖がる患者さんもいるので、吐き気を感じることはないですよ、と説明もします。
竜:この薬ではこういう副作用はないですよ、とそういうことを言ってあげるのも大事ですね。
浅子:違うがん種の話も聞いてくるので、全くご自身のやる化学療法と合っていない副作用の恐怖に駆られてくる方もいます。
竜:そういう人、とても多いですよね。患者同士が変な情報共有をしてしまうこともありますよね。あとは、手足の症状もありますよね。
浅子:皮膚の症状や手足のしびれとかですね。看護師さんがケアを考えてくれるので、それを私たちは処方箋出したり始動処理したりしますね。
皮膚症状やしびれ、痛みなどの副作用にもきめ細かくケア
山田:抗がん剤が効くからこそ皮膚の症状が出やすい場合もある。皮膚の症状が出ればでるほどがんも落ち着くという場合もある。皮膚の症状が出てくれたほうが有難い場合もある。でも患者さん、外を歩いてみんなに見られるとか、嫌な思いもする。いかに皮膚症状を抑えるということも課題です。保湿剤を使います。
浅子:基本は保湿です。皮膚症状が出ることが分かっている抗がん剤は、起きる前から保湿することで皮膚を強くする。乾かないように皮膚を強化して鎧をかぶせるようにします。
竜:保湿剤はどんなものですか。
浅子:今はヘパリンクリームとか、一番皮膚を守ってくれます。実際に皮膚が痛いとか、炎症が起きた場合はステロイド軟骨をきちんと使う。顔の肌は弱いものにして、手足は最強のものを使って、鎮静したらまた保湿剤に切り替えてくださいと言っています。最強のステロイドですと、デルモベートとかマイザーなどを使います。
竜:今は皮膚科の先生に見せなくても対応できるんですか。
浅子:そうです。それも処方セットの中で使いますね。
山田:こういう副作用が出たらこういうセットを使うということを先生方に伝えておくと、先生方もやりやすいです。ものすごく重症化し方だけを専門の先生に見ていただくようにしています。
竜:ものすごく進歩していますね。嬉しい限りです。チームが機能して、みんなで患者さんのためにやっていることが良く分かりました。今日はありがとうございました。