【Dr.竜の診察ノート】新型コロナウイルス感染の後遺症について効果的な治療薬はまだない、感染予防が大事
新型コロナ後遺症
倦怠感、呼吸苦、咳、嗅覚異常、脱毛、PTSD、集中力の低下…
ウイルスの居残り、免疫システムの異常活性化などが原因
後遺症の最も多い症状は全身倦怠感、呼吸苦、胸部不快感であり30%から60%の方に見られる。咳や、嗅覚異常、脱毛などが20%程度に見られる。PTSDや記憶障害、鬱、集中力の低下などの精神症状が20%程度の方にみられ、生活の質の低下が長期間続くので厄介な後遺症である。原因として、小血栓、残余ウイルス、自己免疫、組織破壊などが挙げられる。
①⼩血栓はSPECT-CTで、肺、脳などで見つかり、様々な症状の原因になっている。このような血栓は感染初期から見つかるので、後遺症はCIVID-19の⼀連の病変と言える。
②ウイルスの居残り。2021年にNIのグループは、COVID-19患者44⼈の解剖の結果、全員の脳、筋肉、腸、肺などの広い臓器にウイルスRNAが残存を確認した。無症状感染者でもウイルスRNAが検出され、後遺症と相関があった。
③手に負えない免疫システム。オーストリアの研究チームは、後遺症患者は自然免疫が異常に活性化して、感染後8カ⽉を経てもインターフェロンが高レベルにあると報告した。Yale⼤学のグループはマウスをCoV-2で感染させると、脳に炎症が生じたと報告した。
スタンフォード⼤学の消化器のチームは、COVID-19感染後4カ月以上経って肺炎が治癒した後でも、大便からウイルスが検出されたと報告。また、大腸内視鏡施行した感染者32⼈中21⼈の粘膜からウイルスRNAが検出され、その全員が後遺症患者であったが、検出されなかった14⼈には後遺症はなかった。
コロナ感染で脳の厚さ1%減
意思決定に重要な眼窩前頭皮質
COVID-19感染後の認知機能障害について、大脳皮質変化の研究がイギリスから報告された。51-81歳の785⼈について大脳皮質の各領域の厚さを測定した結果、特に高齢の感染者で、意思決定に重要な役割を果たす「眼窩前頭皮質」の厚さが感染後に1%以上減少していた。現在、後遺症に対する適切な治療法は無く、多くの方が後遺症に苦しんでいる。後遺症治療の研究開発が待たれる。
※「Dr.竜の診察ノート」は、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の竜崇正理事長が、浦安市の市民新聞「うらやす情報」に寄稿したものを発行後に編集して掲載しています。