日医北総病院で、がん患者さんのホースセラピーを体験してきました

お馬さんとふれあい、がん治療の不安癒される
日医北総病院でホースセラピーがスタート、病院では全国初

千葉県印西市の日本医科大千葉北総病院で、今年度からがん患者さんやご家族を対象に、馬とのふれあいによる病気への不安や辛さの軽減を図るホースセラピーの取り組みが始まりました。馬に触れ、時間を過ごすことでどんな気持ちの変化が起きるのか、セラピーを体験してきました。がん患者さんへのホースセラピーの効果検証は、当法人の「先端がん医療研究助成事業」の対象として、今年度助成しています。

日医北総病院ホースセラピーチラシ

日本医科大千葉北総病院のホースセラピー体験会のお知らせ(PDF)

マロ君とニッコウ君、二頭の馬とふれあい

ドクターヘリをテーマにしたテレビドラマ「コードブルー」の舞台にもなった日医北総病院。千葉県印西市、北総台地の自然豊かな森の中にあります。季節は秋真っ只中。さわやかな風と色づいてきた木々の葉が触れ合う音が聞こえてきて、それだけでも癒されます。病院の正面玄関の隣に設営された囲い近づくと、2頭の馬が出迎えてくれました。茶色の馬が「マロ君」。そして、白い馬が「ニッコウ君」。二頭とも道産子という馬の種類です。とても穏やかな性質で、この日もゆっくりとマイペースに草を食んでいました。

馬と触れ合う前に、患者さんはまず血圧や体温、サチュレーションなどのメディカルチェックを受けます。医師による問診を受けて、身体的に無理がないかどうか確認した後、いよいよセラピー開始です。まず、馬のことを感覚的に理解することから始めます。患者さんが二人一組になり、一人が馬役となって、二人で手の甲を触れ合わせながらゆっくりと歩き誘導します。相手に身を委ねることの気持ちの良さ、言葉を交わさなくても通じ合う信頼感を感じ合います。

セラピー、最初は全力疾走の馬で生命の躍動感を感じる

続いて、馬と同じ囲いの中に入り、わずか3m離れているかいないかの近さで馬を勢いよく走らせ、その荒々しい息づかいや、波打つ背中を間近で見ながら、生命の躍動感を体感します。

「全力疾走する馬の鼻息をこんなに近くで感じることは、滅多にない経験です。まず、命の躍動感に触れてほしい」。そう説明するのは、ホースセラピー講師の寄田勝彦さん。寄田さんは、国内外でホースセラピーの牧場を経営し、障害のある子供達や悩める大人向けのセラピープログラムを開発、実行しています。病院でがん患者さんにホースセラピーをするのは初めてとのこと。

ホースセラピーの囲い

病院に隣接したスペースにホースセラピーの囲いがある

疾走する馬に最初は驚き、張り詰めた緊張感を感じましたが、そのうち体の奥からエネルギーがあふれてくるのをはっきりと感じることができました。がんや病気と闘っている時、どうしても治療することにエネルギーを奪われてしまいます。でも、躍動的な馬の動きを見ているうちに、“元気”の感覚が呼び戻されるような感じになるのです。

馬は人との距離感を上手に取る動物

続いて、馬と患者さんが一対一で向き合う時間に入ります。馬も、さっきまでの疾走する姿からは想像もできないほどゆっくとした行動に切り替わり、草を食んだり、尻尾を左右に振りながら、囲いの中を一歩一歩踏みしめて歩くマロ君とニッコウ君。患者さんはふかふかの背中をなでたり、一緒に歩いたりしながら話しかけています。

じゅうたんのようなふわふわの馬の背中に触れ、悩みを打ち明けているうちに、なんだか温かいものに包まれているような、受け入れられているような不思議な感覚を抱きました。「大丈夫だよ、それでいいんだよ」と言われているような、とても幸せなひと時です。

でも、どうして馬なのか。聞いてみると、「馬は人間との距離感を上手に取る生き物」なんだそうです。寄り添ってほしい、近くにいてほしいと思っていると、そばから離れません。でも、今は一人でいたい、一人きりになりたいと思っていると馬は静かにその場から離れていくのだそうです。言葉が通じなくても、繊細に人の気持ちを察知する。そんな能力が馬には備わっているとのこと。がんや病気で治療中の患者さんは、心身の状態によっては一人になりたい時と、だれかに寄り添ってほしい時と気持ちの変化も様々です。そんな複雑な人の気持ちに合わせて動くことができる馬ってすごい!

セラピーを受けた患者さんの一人は、「話しかけているうちに呼吸も合って、とても気持ちが良かった。穏やかな気持ちになれた。これまで家族にも正直に病気のことを話せなかったけれども、話してみようという勇気がもらえた」と話していました。かたくなになった身を委ねることの心地よさ、それを思い出させてくれたようです。

日医北総病院、「病院の中の牧場があるのが理想」
ホースセラピーの本格導入を検討

実は、日医北総病院では馬と患者さんのかかわりということで、これまでにもリハビリやイベントの意味合いをこめた乗馬体験や馬車体験に取り組んできました。今回は初めてがん患者さんと対象を絞って、ホースセラピーの治療的な効果も含めて検証することにしたとのこと。宮下正夫副院長は「がん患者さんが治療に前向きになることが、がん治療ではとても重要なファクターになる。効果を実証できれば、病院の中に牧場を作って本格的にホースセラピーに取り組むことも検討している」と話していました。

日医北総病院と囲い

病院の中に牧場を作ることも検討中

ホースセラピーを受けた後、包まれているようなあったかい感覚はしばらく続き、確かに効果を感じました。乗馬とはまた違った寄り添う関係、患者さんにはぜひ一度馬の温かさをじかに感じていただきたいと思います。

皆さんもホースセラピー、一度体験してみませんか。