流動食を美しく、おいしく食べる提案
療養中こそ食事を楽しんで!

がんなどの病気を患うと、「おいしいものが食べられない」「まずくても栄養を摂って、早く治さなきゃ」「食べる楽しみがなくなってしまった」といった思いを抱く方も多いのではないでしょうか。病気になったら、食べる楽しみはあきらめるしかない。仕方がない。そんな考えが根強く残っていると思います。

それに異を唱えたのが当NPO法人の「ケアフード事業」です。病気だからこそおいしいご飯を食べて、元気になって、人生を生き抜く英気を養うことが大事だと考えました。できる限り口から食べることを続けてほしい。味わい、においを楽しみ、素材のうまみをじっくりと感じてほしい。家族や友人と食卓を囲む楽しい時間を大事にしてほしい。などなど、たくさんの願いを込めてレシピを開発し、試食会などを開いてきました。

フレンチレストランのシェフの協力を得て、レシピ開発

ケアフード

ケアフードの開発は2010(平成22)年に始まりました。当時、東京・飯田橋にあるホテルメトロポリタンエドモント「フォーグレイン」の石原雅弘料理長(現在は東京ステーションホテル総料理長)が、フランス料理の手法を生かして、ピュレやムース、ジュレなど喉ごしの良い状態にアレンジした柔らかいフレンチコースを手掛けているのを耳にしました。そして、医療者や患者さんと一緒にレストランに出向いて、のどごしが良く、美味しく召し上がっていただける食事について、石原シェフから新しい視点や調理法を教えていただいたのがきっかけです。その後も、レストランに何度もお邪魔し、食材の特徴や調理法を教えていただきながら、がん患者さんにも食べやすい食事とはどんなものかを考え、レシピの開発を進めてきました。

ガスパチョ

例えば、新鮮なトマトや洋ナシなどは生のままミキサーにかけます。ニンジン、ゴボウ、レンコンなど固い根菜類や繊維質のキノコは素材ごとにやわらかく煮込んでからミキサーにかける。肉は香りのよい野菜と一緒に炒め煮してからかくはん。魚はすり身にして蒸す…といった調理方法です。お皿に盛り付けた際に、素材ごと調理したものであれば、色も鮮やかでバリエーションに富み、見た目も美しい一皿に仕上げることができます。

レシピを増やしていく中で、患者さんのケアフードについての感想や反応も知りたいと思い、千葉県がんセンターや国立がんセンター東病院、千葉県がん患者大集合、がん予防展で、ケアフード試食会を開催しました。患者の皆さんが参加する調理実習やレシピ本の発刊などにも取り組みました。石原シェフだけでなく、千葉市若葉区のフレンチレストラン「シェケン」の山口賢総料理長にも協力をいただき、ケアフードの商品化にも乗り出しました。

試食会で患者さんの食事の悩みを聞いています

試食会などのイベントでは、がんを患い、抗がん剤治療や放射線治療を受けている患者さんがどのような副作用に悩まされているのか、食事に不都合を感じていることはあるか、どんな食事であれば食べやすいか、どんな味はおいしいと感じるか…などのアンケート調査を行い、分析しました。そして、シェフをはじめ医師、看護師、栄養士の方にもアドバイスをいただきながら、患者さんの治療の状況やニーズに合った食事メニューやレシピに改良しました。

ケアフードは、がん患者さんだけでなく、小さなお子様の離乳食や、ご高齢の方の食事としても美味しく召し上がっていただけることも分かってきました。だれが食べても飲み込みやすくおいしいお料理ですので、ぜひご家族みんなで同じメニューを味わっていただき、食卓でのコミュニケーションを楽しんでいただきたいと考えています。今一度、ケアフードを通じて、日々の「食事」について考えていただき、食べること生きることが楽しみとなるような前向きな気持ちになっていただけたら幸いです。

簡単!飲み込みやすい!
流動食×フレンチ の おいしいレシピを掲載中

「退院したらどんな食事を作ったらいいの?」「抗がん剤治療中は、あまり料理もする気になれない…」など様々な疑問や不安にもお答えできるケアフードの簡単レシピをご紹介します。いわゆる流動食のような食事も、見た目もきれいに、そして美味しく召し上がっていただけるレシピですので、ぜひ皆さんもトライしてみてください。

ケアフードのレシピ集