理念・スピリット

 「がん対策基本法」のスピリットの“実行部隊”として

NPO 法人医療・福祉ネットワーク千葉は、平成19年8月に発足しました。発足した年の春に、患者立法と言われた「がん対策基本法」が施行され、がんの適切な標準治療の確立と、患者さんの気持ちや声を反映したがん対策を進めていくことを法的にも支えることとなりました。当 NPO 法人は、時を同じくして千葉県がんセンターを中心に起きた千葉県独自のがん対策条例の制定への大きなうねりを受け継ぐとともに、がん対策基本法の根底に流れているスピリットを一つひとつ具体化する “ 実行部隊 ” として設立されました。

がん患者さんが安心して治療に臨めるように。
よりよく生きられるように。

そのスピリットとは、一つ目にすべての患者さんが地域で安心、納得してがん治療を続けられるようにすること。二つ目に医療者が自信と誇りを持って治療に当たり、よりレベルの高い治療法の確立と研究にまい進できるようにすることです。さらに、当法人では、「患者さんと医療者とをつなぐ」という柱も加えて、大きく3つの目的を旗印に活動に取り組んでいくことを決めました。10数年の時を経ても、その指針はぶれることなく、様々な活動を通じて一つひとつ実を結んできました。

振り返ってみますと、この10 年間でがん医療を巡る状況は大きく変わりました。今や、二人に一人ががんにかかり、誰もがそのリスクを抱えていると言っても過言ではありません。しかし、早期発見・早期治療により、がんを抱えながらも普通の暮らしをし、社会の一員として長い人生をまっとうすることができるようになりました。ただ、社会参加、在宅での治療継続と衣食住、そして心のケアなどを取り巻く状況はまだまだ整っているとは言えません。患者さん方が、がんを抱えながらもよりよく生きる、住み慣れた地域で自立して生きる、そのためには何か必要なのか、しっかりと見据えていく必要があります。

私たち、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉は、千葉県がんセンターを発祥の地とし、千葉を拠点に活動しております。がんセンターをはじめ、千葉大学、国立がんセンター東病院などのがん診療連携拠点病院とも連携を密にしながら、まさに「千葉発」のがん治療、先進医療の開発に挑み続けています。時代は令和へと移りましたが、新型コロナウイルス感染症との対峙など医療を取り巻く課題も変化しながら尽きることなくあるのが現実です。患者さんの声に耳を傾け、寄り添い、患者さんと医療者とともに力を合わせて一つひとつの課題を解決していく―その姿勢に変わりはありません。当法人の会員のみなさまをはじめ、病院や施設、患者さん、ご家族、地域の皆様には活動を支えていただき大変感謝しております。今後とも、ご指導、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

設立のストーリー

がん対策基本法制定に先駆け、千葉県が取り組んだ「千葉県がん対策条例」構想

がん医療に大きな転換をもたらしたのが「がん対策基本法」であろう。当時、参院議員の山本孝史氏が自らがんであることを公表しながら早期成立を訴え、平成18年6月に制定された。その一年前に千葉県では、がん対策の大きなうねりが起き始めていたのをど存じだろうか。

私が千葉県がんセンター長を務めていた平成17年9月24日、「これからのがん医療」をテーマにとして、当時の堂本暁子県知事、垣添忠国夫立がんセンター総長、 古在豊樹千葉大学長をはじめ、がん患者団体の皆さんとともに、県民公開セミナー を聞いた。このセミナーで、これからのがん医療は最新の治療に加えて、がん患者さんやご家族に寄り添うような対策が望まれるという結論を得た。その会の終了後、堂本知事から、千葉県のが対ん策を考えるための独自の「千葉県がん対策基本条例」を制定したい旨の話があった。さっそく、この意向に沿い、県疾病対策謀の木村正人課長が中心となって条例制定の準備が始まったのだ。

平成 18 年6 月にがん対策基本法が成立。その結果、この「千葉県のがん条例」は制定されないことになったが、国や国立がんセンターに対しては、がん対策に関して、どの県より千葉が一歩抜きんでているとのインパクトを与えた。

都道府県がん診療連携拠点病院に指定された千葉県がんセンターの責務
千葉県全体のがん医療の均てん化、患者さんやご家族への寄り添い

国のがん対策基本法に沿って、千葉県でも県がん対策審議会が結成され、当時の藤森県医師会長が審議会会長、千葉県がんセンター長の私が副会長となり、種々の対策整備が開始された。まず都道府県内で中心的役割を果たす「都道府県が ん診療連携拠点病院」を、千葉大学医学部附属病院との話し合いで、千葉大学病院でなく千葉県がんセンターが務めるこ とになった。また地域がん診療連携拠点病院の指定を、国の求める1 医療圏に1 つの指定にすると人口600 万人の千葉県ではとてもがん医療の均てん化はできないと考えた。そこで、人口50 万人に1 つを目安として国と折衝し、12 の地域がん診療連携拠点病院の指定を得ることに成功した。

千葉県内のがん診療連携拠点病院、がん診療連携協力病院 (千葉県ホームページより)

千葉県がん研究振興会を発展的解消、NPO法人設立へ

千葉県がんセンターが、千葉県のが医ん療全体を司る「千葉県がん診療辿携拠点病院」となったことにより、凶から与えられた責務は、がんセンターでの診療と研究だけではなく、千葉県全体のがん医療の均てん化(高いレベルに揃えて全体をレベルアップする)と、県内の患者さんやご家族に寄り添う事業などが加わることになったのである。 しかし、限られた人員と予算がない中、千葉県がんセンターの中だけはでとても有効な活動ができないという壁にぶちあたった。そこで、今まで千葉県がんセンターの患者さんからの寄付で成り立ち、千葉県がんセンターの研究のみをサポートしていた「千葉県がん研究振興会」を、寄付をいただいた方達から了承を得て、発展的に解消し、平成19 年8月に「NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉」を発足させた。国から与えられた千葉県がんセンターの新しい責務である、千葉県のがん医療の均てん化と、患者さんに寄り添うことを軸に活動を開始したのである。

都道府県がん診療連携拠点病院の千葉県がんセンター

この新しい責務の重要性は、当時の千葉県病院局長や、県の疾病対策課長、そして県千が葉んセンター長、地域のがん診療連携拠点病院に指定された病院長方、そして千葉県の多くの財界人の方もNPO発足に賛同、参加していただいたことからも明らかだ。これが、この10 年間、他のどの都道府県に負もけない有意義ながん対策をめぐる活動を続けてきたNPO法人医療・福祉ネットワーク設立時のエピソードである。
(NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉理事長 竜 崇正)