【骨・軟部腫瘍研究基金】小児に発症しやすい横紋筋肉腫の進行を抑える薬剤の検証に取り組む。高齢患者さんの骨・軟部腫瘍治療のQOL調査や、タイでの治療・研究の現状も報告。千葉県がんセンター整形外科・木下英幸先生によるレポート。

「骨・軟部腫瘍研究基金」事業で、研究・治療に取り組んでいる千葉県がんセンター整形外科の木下英幸先生より、最新の研究成果や現在進めていること、近況などについてレポートをいただきました。基金にご支援、ご協力いただいている皆様にお知らせいたします。

まず、小児世代に発症しやすい横紋筋肉腫の酸化還元反応(レドックス制御)についての検証です。マウスに患者さんの腫瘍検体を移植して、ヒトの腫瘍の病態を再現しやすいモデルを作成し、横紋筋肉腫のレドックス制御の仕組みを調べ、レドックス関連阻害薬の効果を検証しました。その結果、ある薬剤が腫瘍の進行を抑制する薬になりうるとの見解を持てたとのことです。丁寧な基礎研究の成果です。

また、超高齢化社会ならではの研究も報告されています。高齢者の骨・軟部腫瘍も増えており、高齢者の場合は筋肉量も減っているため、腫瘍の摘出手術後のQOLの低下が指摘されているとのことです。今回、高齢患者さんの術後の予後と、QOLについて詳細に調査されました。四肢の機能、術後の痛み、筋肉量、満足度や安心感など様々な角度から検証されています。

そして、今年6月にトラベリングフェローとしてタイでの研修に参加された時のレポートも必見です。貧富の格差がまだ大きく残るタイで骨・軟部肉腫患者さんはどのような治療を受けるのか、治療に対する価値観、医療者側の認識など興味深く読むことができます。木下先生は、現在、イギリスのバーミンガムに留学され、現地病院で半年間の研修に臨まれています。

2022年度 「骨・軟部腫瘍研究基金」助成研究プロジェクト(PDF)
千葉県がんセンター整形外科医長 木下英幸

研究1:横紋筋肉腫の患者腫瘍組織移植モデルの確立とレドックス関連制御
研究2:骨・軟部腫瘍高齢患者における手術療法の術後機能予後とQOL
研究3:アジアにおける骨・軟部腫瘍の研修

NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の「骨・軟部腫瘍研究基金」事業は、平成23年度に設立しました。骨肉腫を中心に、整形外科の先生方による最先端の治療や研究に対して助成し、その成果や最新情報を発信しています。患者さんやご家族、この研究を支援してくださる一般の方からのご寄付をいただき運営しています。その思いを受け継ぎ、がん医療の進展に少しでもお役に立てるよう進めて参ります。