【連載・チーバくんのがん情報局】⑥千葉県がんセンターpart2 竜先生にインタビュー、千葉県が進めた「がん対策条例」構想

がん対策基本法制定記念
連載・チーバくんのがん情報局
⑤千葉県がんセンターpart2
竜先生にインタビュー
がん対策基本法制定に先駆け、千葉県が進めた「県がん対策条例」構想

竜先生:何から話そうか…。やっぱり、まずはがん医療の在り方を大きく変えた「がん対策基本法」のことかな。2年前の2006年(平成18年)に制定されたことは知っているよね。当時、参議院議員の山本孝史氏が自分ががんであることを公表して、異例の議員立法で早期成立につながった話は有名だね。実は、その1年前に千葉県では、がん対策の大きなうねりが起き始めていたんだ。

2005年(平成17年)9月24日、「これからのがん医療」というテーマで、堂本暁子県知事、垣添忠夫国立がんセンター総長、古在豊樹千葉大学長をはじめ、がん患者団体の皆さんと一緒に県民公開セミナーを開いたんだよ。このセミナーの場で、これからのがん医療は最新の治療に加えて、がん患者さんやご家族に寄り添うような対策が望まれるという結論を得たんだ。患者さんの思いに医療者ももっと耳を傾けていくべきだ、それを組んだ対応に積極的に取り組んで行くべきだってね。当たり前のことなんだけれども、これまで、なかなかできていなかったというのも事実。

セミナーの後、堂本県知事から、千葉県のがん対策を考えるための独自の「千葉県がん対策基本条例」を制定したいという提案があったんだ。私も、知事の提案を受けて条例制定に向けて準備を始めたんだよ。
その翌年、2006年(平成18年)6月にがん対策基本法が成立して、その結果、千葉県独自の「千葉県がん条例」の制定の話はなくなったんだけれども、がん対策について、ほかのどの都道府県よりも千葉県は一歩抜きんでているというインパクトを与えることになったのです。

チーバくん:へぇ、千葉県のがん医療の進め方や考え方が、全国的にも注目されるなんて、すごいね。

がん診療連携拠点病院
人口50万人に1つ、きめ細かいがん医療提供体制整える

竜先生:それだけじゃない。よもやま博士からも話があったかもしれない。このがん対策基本法では、がん診療連携拠点病院を指定することが定められているけれども、厚労省が求める指定病院の基準が、「二次医療圏に1つの病院を指定する」というものだったんだ。この基準だと、千葉県内は9つの二次医療圏があるから単純に9つの病院が指定されることになる。でも、千葉県は人口600万人もいる。国基準に従った指定だと、少なすぎて、県民みなさんに質の良いがん医療を提供しきれないということが分かった。そこで、「人口50万人に1つ」という基準になるよう国と折衝して、千葉県がんセンターのほかに12の診療連携拠点病院を指定することができた。人口の多い東葛地区では複数の病院を指定したことで、きめの細かい医療の提供につなげることができたんだ。まだまだ足りていないという思いもあるけれどね…。

チーバくん:そんなエピソードがあったんですね。竜先生も、千葉県や国の動きを見ながら、がん医療発展のため、患者さんと家族を中心とする医療の提供につなげるために奔走してきたんですね。

竜先生:千葉のがん医療の質の高さと考え方は誇りに思ってもいいと思いますよ。都道府県がん診療連携拠点病院になった千葉県がんセンターがやるべきことはたくさんあって、人と予算がない中で、本当に大変なことも多い。しかも病院という枠の中では、できることにも制限があるのも現実。そこで、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉も立ち上げることにしたのだよ。

NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉も設立
患者さんのために動ける実働部隊

竜先生:これまでも、千葉県がんセンターでは、患者さんからの寄付金で成り立ち、千葉県がんセンターの研究のみをサポートしてきた「千葉県がん研究振興会」があった。それを寄付をいただいた方からの了承を得て、発展的に解消し、平成19年8月にNPO法人医療・福祉ネットワーク千葉を発足させたんだ。必要な時に、患者さんを元気にできる、寄り添うことができる活動をする、がん治療に伴う様々な課題や不安、悩みに向き合い、解決できることをみんなで協力して進めていく、それがこのNPOの役割なんだ。

チーバくん:NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉の設立にはそういう思いがあったんだね。がん医療を取り巻く、医療者や患者さん、ご家族の思いが結びついて、設立することができたんだ。自分もできることがあったら、協力したいです。

竜先生:チーバくん、ありがとう。がん診療連携拠点病院としての役割も、NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉もまだまだ始まったばかり。これから、どんなことができるか模索中だよ。いろいろなことに挑戦していきたいね。チーバくんは、まずは、千葉県がんセンターのこと、がん医療のことをもっとみんなに伝えてください。

チーバくん:了解しました。千葉県がんセンターこと、もっと知りたいです。

竜先生:次は、千葉県がんセンター1階の通院化学療法室に行ってみるといいよ。がん治療の大事な柱、抗がん剤治療の最新のことが分かると思うから、山田みつぎさんという看護師さんを訪ねていくといいよ。

チーバくん:ありがとうございました。