【気になる一作・本】「知的文章術入門」黒木登志夫(岩波新書) 情報を読み解く力、書く力…生きる力のアップ、間違いなし!

正しい日本語、英語の使い方からコピペがダメな理由、ウィキペディアの正しい利用法まで
医学論文、企画書、小論文などあらゆる「文章を書く力」を指南
文系・理系を超えて、生き方までも磨かれる一冊
黒木登志夫氏の新刊 「知的文章術入門」(岩波新書)

日本を代表する医学者でサイエンスライターの黒木登志夫先生(日本学術振興会学術システム研究センター顧問、東京大学・岐阜大学名誉教授)の新刊著書「知的文章術入門」(岩波新書)が発刊されました。昨年発刊された「新型コロナの科学」(中公新書)に続く新著です。黒木先生は、3カ国でがんの基礎研究に携わる中で、300本以上の英文論文の執筆を続けてこられました。さらに、50年に渡って論文執筆の指導や審査にも関わってきました。この本の中では、昨今ますます必要性が高まっている表現力や発信力の向上を目的とし、言葉の使い方の基本から論文や企画書の書き方まで丁寧に解説されています。

まずは、日本語と英語の基礎から。特に論文の査読や執筆の場合は英語の高いスキルが求められます。英語を読み、聞き、話し、書く-この4技法について、それぞれに分けて適した方法を記しています。論文に限らず、メールの書き出し、面識のない方へのメール文章、返事が遅れた時…など様々なシーンに合わせて様々な文例を紹介しています。

情報化・ネット社会に生きる私たちにとって、情報収集や活用の方法はもはや必須スキルですが、なかなか系統立てて学んだ経験は少ないのではないでしょうか。「論文で、コピペはなぜいけないか」「ウィキペディアから手早く引用したい」「SNSやスマホに頼り切りたくない」など誰しもが一度は考えたり悩んだことがあると思います。この本では、情報を探す、賢く使うという内容で一章立てています。研究論文へのウィキペディアからの引用は認められていないことが多いが、情報源の最初の手がかりとして使うことは有用な方法だとしています。引用文献を調べるきっかけにしたり、英語版を読んだりすることは視野を広げることになるとのこと。wiki世代にとっては、気が楽になるような内容もたくさん掲載されています。

スマホ依存を予防するには…

また、気になるスマートフォンとの付き合い方や依存についてもユニークな切り口で書かれています。スマホ依存にならないための“秘策”として、スマホの画面を白黒にする、SNSはアンインストールしてパソコンで見る…などを挙げていて、思わず苦笑してしまう内容も。画面の白黒化は、黒木先生ご自身も試してみたところスマホを見る気がしなくなったそうです。SNS、フェイクニュースに惑わされないための方法なども解説。自分の眼で、データを客観的に数字や統計で丁寧に分析することの重要性を説いています。

「文章」「表現」をテーマに、先生ご自身の経験と生き方、優しさを交えながら分かりやすく学ぶことができる一冊ですので、論文執筆に取り組む研究者の方、学生さんのみならず、広く皆さんにも読んでいただきたいと思います。「知的文章術入門」ぜひお手に取ってみてください。

黒木先生と竜理事長は山スキー仲間

当法人の竜理事長は、黒木先生と医療者・科学研究者として長年親交があるほか、山スキー仲間としてともに活動する間柄です。40年以上続いているという富山の立山スキーセミナーでは、昼はスキー、夜はがん医療に関する勉強会を開くという充実した企画で、ユーモアと知識あふれる黒木先生を囲みながら楽しく有意義な時間を過ごしてきたとのことです。