【寄稿・東京パラリンピックを見て】車いすバスケ男子日本代表が銀メダル。香西選手起用の妙、そして守備とスピード、チームの一体感が生きた熱戦に感動! 大西眞澄さん(元千葉県がんセンター看護局長)

東京2020パラリンピック(8/24~9/5)をテレビ観戦
車いすバスケットボール男子日本代表チーム、銀メダルの快挙!
チーム全体の良さ、選手一人ひとりの強みが生きたプレーに
【寄稿】大西 眞澄さん
(NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉常任理事/元千葉県がんセンター看護局長)

障がい者スポーツの祭典 東京2020パラリンピックが閉幕しました。これほど熱くテレビ観戦したのは初めての体験でした。新型コロナウイルスの拡大に脅かされながら、東京に集まってくれた世界各国の選手たち。問題をはらみながらも、数々の名場面を私たちに見せてくれ、元気をいただきました。ここには、車いすバスケ男子日本代表チームに関することを、テレビを見ていた時のメモや、ネットからの情報などを参考に書いてみようと思います。

最終日9月5日に決勝が行われ米国に惜敗しましたが、最高の舞台で、最高のプレーを見せ、銀メダルで大会を終えたかっこよいアスリートたち。

予選リーグ
グループAで、コロンビア(8/26)、韓国(/27)、カナダ(/28)、スペイン(/29)、トルコ(/30)と対戦し2位通過。決勝リーグへ。

準々決勝(9/1)
オーストラリア戦 61-55 強豪の相手に対し、日本代表がリードした時間帯は32分1秒、終始優勢で勝利。

準決勝(9/3)
イギリス戦 79-68 2018年世界選手権優勝のイギリスに逆転勝ち。

決勝(9/5)
米国戦 60-64 米国を追い詰めながらも底力に屈した。今の日本がどれだけ通用するか真っ向勝負しあと少しのところまで追いつめた。

監督・及川晋平さん、ヘッドコーチ・京谷和幸さんの新体制で臨んだ東京2020

東京2020に向け、チームは及川晋平監督と京谷和幸ヘッドコーチ(元リーガー)の新体制になり、日本の特徴を武器にした独自スタイルの「トランジションバスケ」、「ディフェンスで世界に勝つ」をコンセプトにやってきた集大成の結果である。

ヘッドコーチの京谷さん

世界に勝つために、ディフェンスリバウンドからの速いオフェンス、激しいプレスディフェンスを武器にチームのトータルバランスがベストになる12名を選考した。
(別紙 2020東京 車いすバスケ男子日本代表選手名簿を参照)

攻守の素早い切り替えを志向する「トランジションバスケット」、「一人一人の勢いを止めることが何よりも大切」「守備を修正することで攻撃にリズムがつく」。素早いパス回し、激しい攻防、日本の強みを生かした試合、切り替えの早いディフェンス、どの選手も40分戦える。高さある相手に対し、日本は守備とスピードで対抗し、チームの一体感と連携が勝利につながるということを見せていただきました。

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日本のエース、シューター・香西宏昭選手の起用

そして、今大会の最大の戦略は、香西選手の起用法にあったと思います。
「手の内を見せたくない」とベンチを温める時間帯が多かった香西選手。苦戦を強いられた戦いの時。、プレスディフェンスの重要なキーマンの一人であり、シューターとして世界のトップクラスの実力者・香西選手。大会序盤で温存し、加えて全試合でスタメンではなく流れを変えるためのシックスマンとして起用した京谷ヘッドコーチの戦略は見事であり、その指揮官の期待にしっかり応えた香西選手の実力の高さがいかんなく発揮された大会となりました。

具体的な一例。カナダとの戦い
残り5分、3ポイントシュートを決めて逆転に成功。一気に勝利へ。

予選選第3戦目のカナダに逆転勝利した時は、本当にしびれました。過去5大会中4大会でメダルを獲得している強豪カナダ代表。その中心選手である「車いすバスケ世界のマイケルジョーダン」こと パトリック・アンダーソンは、簡単にシュートを打たせないディフェンスを行う日本のプレッシャーをものともせずシュートを狙う。そして、ディフェンスのすきをついて素早いチェアーさばきでゴール下に入り込み確実に得点を重ね、日本は19-30と大量リードを許し前半を終えた。

後半、日本は香西選手がミドルと3ポイントシュートを立て続けに決め、その後 速攻も決まり点差を縮めた。 しかし、プレッシャーをかけたディフェンスを行うがゆえにファウルがかさみ、なかなか差を詰める事ができない。38-44で迎えた最終クォーター。古澤選手がスクリーンを使ってフリーでのシュートチャンスを生かして得点を重ねて、カナダのファウルを誘発。ついに46-46と同点に追いついた。高さがある秋田選手が、アンダーソンに対してオフボールでも激しくマークにつくことで体力を消耗させ、ボールを持たせない。残り5分、香西選手が激しいマークを受けながらも、3ポイントシュートを決め54-52とついに逆転に成功した。

前半戦では太刀打ちできないと思われたが、香西選手、古澤選手、豊島選手、鳥海選手、秋田選手、赤石選手等々、鍛え上げたフィジカルが功を奏し、うまく作戦を変えて戦力を落とさず、耐えて、よくしのいで追いつきチーム全員で勝ち取った60-56の逆転勝利でした。

監督・及川晋平さんと私のこと

及川晋平監督(50歳)のことは、これまで数多くマスコミにも取り上げられており、ご存知の方が多いと思います。晋平さんとの出会いは、彼が16歳の時 骨肉腫で5年間の闘病生活をしていたころです。その後、車いすの名門チーム「千葉ホークス」に加入し、22歳でアメリカへ留学し、本格的に車いすバスケの道を切り開いたことは後で知りました。

帰国後、名将マイク・フログリーと連絡を取り合い、日本での車いすバスケのキャンプを企画・開催し、意欲的に活動の幅を広げられています。ちなみに、この第1回のJキャンプに登場してきたのが当時12歳の香西選手で、このキャンプで「10年後楽しみ賞」というサプライズをフログリーからもらいます。彼は10年後にアメリカに渡りフログリーの下でプレーしているのですからすごいですよね。

晋平さんが東京のクラブチーム「NO EXCUSE」のヘッドコーチ兼選手として活躍している頃は、毎年天皇杯日本車いすバスケ選手権大会や、千葉ポートアリーナで開催される長谷川良信記念・千葉市長杯争奪車いすバスケ全国選抜大会には欠かさず行き、ロゴ入りのオレンジTシャツを着て応援していました。

2011年東日本大震災の後、「NO EXCUSE」チームの練習会場が使用不可能になり、私のところに晋平さんからSOSの電話が入りました。当時千葉県立野田看護専門学校に勤務しており、その体育館の使用の有無を打診されたのです。看護学生が選手の方々を見て学ぶことが多いと判断し、必要な部署の了解を得て約10か月間 練習会場に提供しました。

また、「NO EXCUSE」は社会貢献として体験学習を実践しており、看護学生のために講演と車いすバスケ体験会を開いていただきました。これらは当時の事務職の方の多大な協力があって成しえたことです。

2013.2  千葉県がんセンターのにとな文庫に、車いすバスケのマンガ「リアル」全巻と、作者の井上雄彦さんのサイン色紙を持ってきてくださいました。

千葉県がんセンターにとな文庫にて。右側が及川晋平さん

車いすバスケのマンガ「リアル」の作者・井上雄彦さん

 

2016.3  リオ2016パラリンピック 車いすバスケ男子日本代表(9位)の写真とサイン入り色紙をいただき、にとな文庫に飾りました。

にとな文庫のコーナー

リオ五輪パラリンピックの記念写真

おもてなし「プロジェクト結」で箸置きを作製
IOC・バッハ会長にもプレゼント

2018.1 全日本代表バスケ選手がカナダに遠征する時、「プロジェクト結」で作製した海外の方へのおもてなしを目的とした「箸置き」を、晋平さんに持っていっていただきプレゼントしてもらったときのものです。

カナダ遠征でおもてなし「箸置き」をプレゼント

「箸置き」つくりは誰にでもできる「おもてなし」として、東京2020オリパラで来日する海外の方へ渡すことを目的とした「プロジェクト結」の事業です。私の勤務するカンナナーシングホームかわどでも100セット作成しました。その後も、目標の20,200個の作成に協力しました。そして、今年の8月、大会運営本部に届けられ、バッハ会長さんにも渡されたそうです。

おもてなし「プロジェクト結」で作製した箸置き

2018.6 東京2020に向けた車いすバスケ男子日本代表国際強化試合(武蔵野の森総合スポーツセンター)の時、パネルの前で撮ったものです。


2021.9 千葉県がんセンター新病院のにとな文庫には、今も井上雄彦さんの色紙が飾られて、リアルも書棚に置いてあります。

千葉県がんセンター新病院のにとな文庫