【ケアフード】ケアフードの心を語る、石原雅弘シェフ 第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会で講演

「料理人として、全ての方に美味しいお料理を召し上がっていただきたい」
「会話、笑顔が増える食事を作りたい」
石原雅弘シェフ(東京ステーションホテル総料理長)がケアフードに込めた思いをていねいに語る
令和3年7月21日、第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会で特別講演

「いろいろな方のいろいろなご要望におこたえして提供するのがケアフードだと思っています」。石原雅弘シェフのご講演はこの言葉から始まりました。石原シェフは、7月21日、神戸市で開かれた第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会の特別講演会にオンラインで臨まれました。

ケアフードは、ご高齢であったり、ご病気など事情でなかなか通常の食事が召し上がれない方のために、調理の段階で様々な工夫をこらして食べやすくしたお料理です。当NPO法人でもがん患者さんの療養中の食事として、がんの部位や症状などに応じたケアフードレシピの提案を行っています。石原シェフはフランス料理のシェフとして10年以上に渡り、レシピ考案やアドバイザーとして当NPO法人の活動に関わってくださっています。

胃がんのお客様に、フレンチのフルコースをケフアードで提供

講演では、石原シェフがケアフードを考案するに至った経緯として、当時料理長をしていた飯田橋のホテルでのエピソードを紹介しました。胃がんで胃を切除した方が他の方と同じフレンチのフルコース食事はできないから、スープとスクランブルエッグだけでいいですと遠慮がちに言われたので、「食べやすいお料理にしますので、ぜひフルコースを召し上がってください」と伝えて、ミキサーを使い、それぞれの食材をなめらかにアレンジした皆さんと同じフルコースを提供されたそうです。その方は、「こんなにおいしく食べられると思っていなかった」とおっしゃって、とても喜んでくださったとのことでした。石原シェフは「特別なことをしたつもりは全くなくて、お客様に喜んでいただけるよういかようにもするのが料理人の務めなんです」と話しました。ホテルには、様々な年代の方、海外からお越しになる方、様々な宗教の方などがいらっしゃるので、要望に合わせて料理を作るのは当たり前のことなんです、と強調されました。

フレンチフルコースのケフード

身近な素材のおいしさ引き出す技法

タマネギやニンジン、トマトなど身近な食材を使ったケアフードのレシピも紹介されました。ケアフードの調理は、フランス料理の技法を生かして作ります。フランス料理の技法には、ピュレ、ムース、フランなど食材の特性に合わせた調理法がたくさんあり、上手に組み合わせることで素材の味をうまく引き出すことができます。洋食に限らず、肉じゃがやブリ大根、山形だだちゃ豆のムース、うどん、ラーメンなどなじみのあるメニューに応用したレシピも挙がりました。

最後に「高齢者や療養中に限らず、食事のことで悩んでいる方が多い。国や県を挙げて、もっと食事のことをサポートできるような仕組みが整うことを願う」と話し、今後も安定して一人ひとりのご要望の応えていけるような社会になるよう力を尽くしたいと語りました。

石原シェフは、現在、東京ステーションホテルの総料理長として全体の指揮をとりながら、若手シェフの育成にも関わっておられます。経験と技術が必要なシェフの世界で、いかに多くの経験を積んで技術に磨きをかけるか、若手の指導方法の工夫ついても紹介しました。

第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会JSPEN2021(会長・鍋谷圭宏氏(千葉県がんセンター診療部長/NSTチェアマン)) は7月21日~22日、神戸ポートピアホテルを会場にオンラインでの発表も合わせたハイブリッド形式で開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、当初予定していた2月の開催から何度も期日を仕切り直して実現しました。